2011-02-01から1日間の記事一覧

灰とダイヤモンド('58) アンジェイ・ワイダ <〈生〉と〈死〉を分ける禁断のラインを挟んで、一瞬交叉した、「ポーランドの悲劇」の象徴的構図>

ヨーロッパの大地の多くを前線と化して荒れ狂った、「共通の敵」(ナチス・ドイツ)が消えたことによって、そこに残された、イデオロギー濃度の深い二つの組織の対立はより尖鋭化し、テロリズムと粛清という極めて厄介な連鎖を矢継ぎ早に分娩していく。 その…

少年時代('90) 篠田正浩 <「思春期前期」の抑制困難な氾濫の中で ―― 汝の名は「擬似恋愛」なり>

「何も言うな。俺は可哀想なんかじゃない」 クーデター前のガキ大将の少年が放ったこの言葉が、本作の健全なヒロイズムを根柢から支えている。 この映画の強さは、そこにある。 この強さは、そこに至るまで表現してきたものの構築的な強さである。 従って、…

相対経験

経験には、「良い経験」と「悪い経験」、その間に極めて日常的な、その時点では評価の対象に浮き上がって来ない、厖大な量のどちらとも言えない経験がある。 この経験が結果的に自分を良くしてくれたと思われる経験が「良い経験」で、その逆のパターンを示す…