2011-02-13から1日間の記事一覧

レイジングブル('80) マーティン・スコセッシ <技巧を欠損させた男の損益分岐点>

1 決してダウンしない男 ―― ブルファイターの矜持 「俺は自分でやる」 この言葉を信条にするほどに、人に頼るのを最も嫌う男。 パウンド・フォー・パウンド(ハンディなしに全階級の格闘家が闘ったと仮定したときの最強チャンプ)の栄誉を讃えられ、史上最…

家族の肖像('74)  ルキノ・ヴィスコンティ <老境無残―「状況」に捉われて、噛まれて、捨てられて>

1 異文化圏に棲む者たちに翻弄されて イタリアのローマ。 この大都市に豪邸を構える一人の教授がいる。家政婦と共に住むが、家族を持たない孤独な生活を送る彼の趣味は、絵画のコレクション。それも「家族の肖像」と呼ばれる、家族団欒を描いた18世紀英国…

劒岳 点の記('09) 木村大作 <「仲間」=「和」の精神という中枢理念への浄化の映像の力技>

「昨今のチャラチャラした日本の男たちは・・・」、「金融資本主義に突っ走る、今の日本社会の荒廃は・・・」、「CGなどの表現技巧に依存するハリウッド映画の物真似は・・・」等々という説教を喰らいそうな映画だが、それでも本作が、「キャッチコピー」だけの欺瞞…