2011-03-16から1日間の記事一覧

雲が出るまで('04)   イエスィム・ウスタオウル <「ネガティブな自己像」を溶かした一枚の古い写真>

「ネガティブな自己像」を自我の奥深くに隠し込んで、安定的な物語を構築した姉弟がいた。 しかし、唯一の身内の死によって、安定的な物語を根柢から破綻させられた姉が、内側に封印していた「ネガティブな自己像」の本質的清算を、内的に要請されるに至った…

真実の瞬間(とき/'91) アーウィン・ウィンクラー  <自己像を稀薄化できなかった男が炸裂して>

「真実の瞬間」という重苦しい映画のファーストシーンは、元共産党員だった一人の映画人が、圧力に屈していくさまを映し出している。 カリフォルニア 1951年9月 非米活動委員会 最高喚問会 「協力するのだ。共産党員を野放しにしたいのか?党員がバッ…

リラの門('57)  ルネ・クレール <内在する「児戯性」――その「快・不快」という行動原理のアポリア>

「皆は俺をろくでなしというが、全くその通りだ」 これは、親友のシャンソンの名手である「芸術家」に、隣家に住むジュジュが捨てた言葉。 「俺は何で生きてると思う?首を吊って死にたいからだ」 これも、ジュジュの口癖だ。 その口癖を聞かされるのも、親…