2011-03-19から1日間の記事一覧

鉄道員(ぽっぽや/'99)  降幡康雄  <聖者の大行進>

「鉄道員」は、感動を意識させた原作と、同じく感動を意識させた映像が結合し、私には些か厭味な映画になった。 映画はとても良くできている。 完成度もそれなりに高いので、日本アカデミー賞を総舐めにした理由も納得できなくはない。 しかし、それらが却っ…

エイトメン・アウト('88) ジョン・セイルズ  <「強き良きアメリカ人」という物語の重さ>

1919年、第一次世界大戦に参戦したアメリカが自国の勝利に沸いていた時代、大衆の娯楽と言えば、ベースボールに尽きた。ベーブルースが活躍していた頃の熱気ムンムンのメジャーベースボール・シーンでは、ベースボールの勝敗が賭博の対象になる位の活況…

それでもボクはやっていない('07)  周防正行 <警察・検察・司法の構造的瑕疵への根源的な問題提示>

1 警察・検察・司法の構造的瑕疵を根源的に問題提示した、秀逸な社会派の一篇 本作は、人に言えないほどの辛い経験の混乱の中で、相当程度、曖昧となった少女の記憶が、刑事の情報誘導によって補完されることで、矛盾なく固まったと信じる主観の稜線上に、…