2011-09-28から1日間の記事一覧

レスラー('08)  ダーレン・アロノフスキー <「何者か」であり続けることを捨てられない男の究極の選択肢>

序 シンプルな情感ラインで描き切った、武骨な男の孤独の悲哀 全てを失った男が、自分の「墓場」と決めた場所で昇天する。 そこに至るまでのプロセスに、人生の哀感が存分に詰まっていて、それが観る者の心を痛々しく、切ないまでに騒がせるのだ。 そんな映…

クレイジー・ハート('09) スコット・クーパー <闇深き病理への治癒の困難さを、簡単にスル―してしまう物語の安直さ>

1 「男の生きざま」という、「物語の芯」の脆弱さ ハリウッド映画の浮薄さを曝け出した、凡作の極みのような一篇。 地の果てまでも続くと思わせる、広い大地の遥か上空を占有する、ゆったりと流れる雲と抜けるような青空。 この大自然を背景にして、白人開…