2012-01-26から1日間の記事一覧

エレニの旅('04)  テオ・アンゲロプロス <極点まで炙り出す悲哀の旅の深い冥闇のスティグマ>

1 「生涯難民」という懊悩を刻む呻き アンゲロプロスの映像世界の本質が、20世紀という、人類史上にあって、そこだけは繰り返し語り継がれていくであろう特段の、しかし際立って尖った奔流が、脆弱なる抑制系を突き抜けて垂れ流した爛れの様態の中枢に、…

シテール島への船出('83)   テオ・アンゲロプロス <「戻るべき場所」を削り取られた者の「内的亡命」という実存への希求>

1 「決定的構図」を構築できる「イメージ喚起力」の豊潤さ 些か面倒臭いカテゴリー分類だが、本作は、「こうのとり、たちずさんで」(1991年製作)、「ユリシーズの瞳」(1996年製作)へと続く「国境三部作」の第一作であると同時に、「蜂の旅人」…

霧の中の風景('88) テオ・アンゲロプロス  <始めに混沌があった>

1 まだ見ぬ父への旅が開かれて 始めに混沌があった それから光がきた そして光と闇が分かれ 大地と海が分かれ 川と湖と山が表われた その後で 花や木が出てきた それに動物と鳥も・・・ 闇が支配する部屋の小さなベッドに身を埋めて、11歳の姉が5歳の弟に、…

永遠と一日('98) テオ・アンゲロプロス <「人生最後の日」―― 軟着点の喪失と千切れかかった魂の呻吟、或いは「自分という人間を見つめる、そのまなざし」>

1 「そのとき、全てが、時が止まる」―― 海辺の家の記憶 -― その映像の粗筋を、原本となったシナリオを参照にして詳細に追っていこう。 イタリア様式の外観を見せる海辺の家。 「アレクサンドレ、島へ行こう」 「どこへ?」とアレクサンドレ少年。 「島だよ…