2012-04-01から1日間の記事一覧

蜂蜜('10)  セミフ・カプランオール <正夢になってしまったリアリティの中で、6歳の児童の自我を噴き上げた情動の氾濫>

1 行間を語らないことによって保証された映像宇宙のイメージ喚起力 映画の中で提示された物語が、その映画総体の中で、殆ど「予約された感動譚」の本質とも言うべき、2時間程度の時間限定的な物語のうちに自己完結してしまう映画の脆弱さは、物語の肝の部…

雲が出るまで('04)   イエスィム・ウスタオウル  <「ネガティブな自己像」を溶かした一枚の古い写真>

1 「ネガティブな自己像」を隠し込んで構築した物語の破綻 「ネガティブな自己像」を自我の奥深くに隠し込んで、安定的な物語を構築した姉弟がいた。 しかし、唯一の身内の死によって、安定的な物語を根柢から破綻させられた姉が、内側に封印していた「ネガ…