2012-05-02から1日間の記事一覧

白いリボン('09) ミヒャエル・ハネケ <洗脳的に形成された自我の非抑制的な暴力的情動のチェーン現象を繋いでいく、歪んだ「負のスパイラル」>

1 「純真無垢」の記号が「抑圧」の記号に反転するとき 物語の梗概を、時系列に沿って書いておこう。 1913年の夏。 北ドイツの長閑な小村に、次々と起こる事件。 村で唯一のドクターの落馬事故が、何者かによって仕掛けられた、細くて強靭な針金網に引っ…

隠された記憶('05) ミヒャエル・ハネケ <メディアが捕捉し得ない「神の視線」の投入による、内なる「疚しさ」と対峙させる映像的問題提示>

差出人不明のビデオテープが届く事態に不安を募らせていく、テレビ局の人気キャスターの夫と、出版社に勤務する妻。 夫の名は、ジョルジュ。 妻の名は、アンヌ。 そこに送付されていた、子供が血を吐く拙い絵。 更に、今や介護者と共に暮らす実母が住む、ジ…

ピアニスト('01)  ミヒャエル・ハネケ <「強いられて、仮構された〈生〉」への苛烈極まる破壊力>

1 「父権」を行使する母との「権力関係」の中で 母の夢であったコンサートピアニストになるという、それ以外にない目的の故に形成された、実質的に「父権」を行使する母との「権力関係」の中で、異性関係どころか、同性との関係構築さえも許容されなかった…

ファニーゲーム('97) ミヒャエル・ハネケ <暴力の本質的な破壊力についての、冷徹なまでに知的な戦略的映像の極北>

夏の長期休暇をとって、湖畔の別荘へ向かうショーバー一家。 ヨットを牽いたワゴン車内には、夫のゲオルグ、妻のアナの夫妻と、一人息子のショルシと愛犬が同乗している。 奇妙な「事件」が起きたのは、セーリングの準備をしている父子の留守のときだった。 …