2012-05-26から1日間の記事一覧
1 個の生物学的ルーツと心理学的ルーツが乖離することで空洞化した、屈折的自我の再構築の物語 本作は、個の生物学的ルーツと心理学的ルーツが乖離することで空洞化した自我を、日常的な次元の胎内の辺りにまで、深々と引き摺っているような一人の若い女性…
1 男の脱出願望と、感謝の被浴による快楽との危うい均衡 必ずしも、本作の主人公である「『善人性』を身体化するニセ医者」のバックボーンが明瞭に表現されていないが、私なりにイメージする、件の「ニセ医者」の心理の振れ具合に焦点を当てて書いてみよう…
1 完全拒絶によって開かれた「事件」の闇 本作は、ある「事件」を契機に、雁字搦めに縛りあげていた「圧力的な日常規範」から、自我を一気に解放していく心的過程を辿っていく者と、自在に解放された世界で自己運動を繋いでいた自我が、その解放への起動点…
1 象徴的イメージを負った記号 ここに、6人の日本人がいる。 1人、2人目は梶川夫婦。拡張型心筋症の息子(8歳)を持ち、近々、タイで心臓移植を計画している夫妻である。① 3人目は、買春目的でタイに行き、非合法でペドフィリア(小児性愛)を愉悦し、…
1 無傷で生還し得ない者たちの映画 言わずもがなのことだが、本作は、主要登場人物8人(祐一、光代、祐一の祖母、祐一の母、佳乃、佳乃の父の佳男、佳乃の母、増尾、)のうち、物理的に生還できなかった者(佳乃)を除いて、無傷で生還しなかった者は一人…