2012-07-14から1日間の記事一覧

「連合赤軍」という闇 ― 自我を裂き、削り抜いた「箱庭の恐怖」  5

5.魔境に搦め捕られた男の「自己総括」 稿の最後に、「連合赤軍」という闇を作り上げた男についてのエピソードを、ついでに記しておく。永田洋子と共に、仲間が集合しているだろう妙義山中(写真)の洞窟に踏み入って行った森恒夫は、そこに散乱したアジト…

「連合赤軍」という闇 ― 自我を裂き、削り抜いた「箱庭の恐怖」  4

4.恐怖越えの先に待つ世界 しかし兵士たちの山越えは、兵士たちの運命を分けていく。 時間を奪還できずに捕縛される者と、銃撃戦という絶望的だが、せめてそれがあることによって、失いかけた「革命戦士」の物語を奪還できる望みがある者との差は、単に運…

「連合赤軍」という闇 ― 自我を裂き、削り抜いた「箱庭の恐怖」  3

3.箱庭の恐怖 ある人間が、次第に自分の行動に虚しさを覚えたとする。 彼が基本的に自由であったなら、行動を放棄しないまでも、その行動の有効性を点検するために行動を減速させたり、一時的に中断したりするだろう。 ところが、行動の有効性の点検という…

「連合赤軍」という闇 ― 自我を裂き、削り抜いた「箱庭の恐怖」  2

2.箱庭の帝王 森恒夫と永田洋子が上州の山奥に構築した場所は、およそ人間の自我を適度に休ませる場所から最も隔たっていた。 人間の自我に恒常的に緊張感を高める場所にあって、森恒夫の自我は常に裸にされることを恐れつつ、必要以上の衣裳をそこに被せ…

「連合赤軍」という闇 ― 自我を裂き、削り抜いた「箱庭の恐怖」  1

1.最高指導者 森恒夫はかつて、赤軍派の内ゲバの恐怖から敵前逃亡を図り、組織から離脱したという過去を持つ。当時、赤軍派の創立者であった塩見孝也の意向により組織への復帰を果たすが、実は、この消しがたい「汚点」が、後の連合赤軍事件の陰惨さを生み…

「連合赤軍」という闇 ― 自我を裂き、削り抜いた「箱庭の恐怖」  序

1971年末から72年にかけて、この国を震撼させた大事件が起こった。「連合赤軍事件」がそれである。 連合赤軍とは、当時最も極左的だった「赤軍派」と、「日本共産党革命左派神奈川県委員会」(日本共産党から除名された毛沢東主義者が外部に作った組織…

何者かであること

人間は、自分が何者でもないことに耐えられない生き物であるらしい。 自分が何者かであるということを認知された者は、その認知を更に高く固め上げていかないと不安になり、自分が何者かであることを未だ充分に認知されていない者は、認知を得るために必要で…

反偉人論

民主主義や愛を語る人が、常に謙虚な博愛主義者であるとは限らない。 多弁なヒューマニストはまず怪しいが、寡黙なエピキュリアンというケースも大いにあるので、語らない人が必ずしも美徳の体現者であるとは、当然言い切れない。どだい、人間を特定の尺度で…

ストレスとの良き付き合い方

そもそも、ストレスとは何だろうか。 「大辞林」によれば、「精神緊張・心労・苦痛・寒冷・感染などごく普通にみられる刺激(ストレッサー)が原因で引き起こされる生体機能の変化。一般には、精神的・肉体的に負担となる刺激や状況をいう」と言うこと。 次…

虚栄の心理学

虚栄心とは、常に自己を等身大以上のものに見せようという感情ではない。自己を等身大以上のものに見せようとするほどに、自己の内側を他者に見透かされることを恐れる感情である。虚栄心とは、見透かされることへの恐れの感情なのである。 同時にそれは、自…

偏見という病理

偏見とは、過剰なる価値付与である。 一切の事象に境界を設け、そこに価値付与して生きるしか術がないのが、人間の性(さが)である。その人間が境界の内側に価値を与えることは、境界の外側に同質の価値を残さないためである。通常、この境界の内外の価値は…