2012-07-15から1日間の記事一覧

愛の深さ(二)

恋愛は愛の王道ではない。(写真は、イングマール・ベルイマン監督の「ある結婚の風景」) 邪道であるとは言わないが、少なくとも、それが「究極の愛」ではないことは確かである。それは単に、愛の多様な要素が濃密に集合しただけである。或いは、それがもた…

愛の深さ(一)

愛とは「共存感情」であり、「援助感情」であると喝破したのは、現代アメリカの心理学者のルヴィン(注1)である。彼はそのことを、度重なる心理実験によって確信を得たのである。(絵画は グスタフ・クリムトの「接吻」) これは、心理学重要実験のデータ本…

愛される権利

人間には、人を愛する自由はあるが、人から愛されるという権利はない、と書いた人がいた。 しかし子供だけには、愛される権利というものがある。子供は愛されることがないと、健全なナルシズムが育たないのである。「母に愛される自己」を愛することができる…

関係の破綻

関係は構築するのに難しく、破壊するのに造作はいらない。構築するのに要したあの厖大なエネルギーに比べて、破壊されていくときのあの余りの呆気なさに形容する言葉がない。 この目立ったアンバランスさこそ、関係の言い知れない妙であり、或いは、真骨頂で…

人格変容

人は死別による喪失感からの蘇生には、しばしばグリーフワーク(愛する者を失った悲嘆から回復するプロセス)を必要とせざるを得ないほどに記憶を解毒させるための時間を要するが、裏切り等による一時的な内部空洞感を埋める熱量は次々に澎湃(ほうはい)し…

英雄の戦後史

英雄を必要とする国は不幸である、と言った劇作家がいた。英雄を必要とするのは、国家が危機であるからだ。しかし国家が危機になっても、英雄が出現しない国はもっと不幸である。なぜなら、英雄が出現しないほどに国民が危機になっているからだ。 英雄を必要…

魔境への誘い

ハレとケ。 日常性の向うに、それを脅かすパワーを内包する、幾つかの尖った非日常的な世界がある。上手に駆使することで日常性を潤わせ、その日常性に区切りを付け、自我に自己完結感を届けさせてくれるような微毒な快楽がそこに含まれているので、それは人…

不眠という病理

近年、睡眠に関する研究は飛躍的に進んできて、多くの事柄が科学的に解明されてきているようだが、私たちに最も身近な、不眠に関する研究に関しては、ようやく緒についたらしい。(写真はヘリコプターから眺めた東京の夜景) 不眠を科学的に説明し、その解決…

恥じらいながら偽善に酔う

阪神大震災(写真)は、眼を覆わんばかりの悲惨の後に、無数の人々の善意が圧倒的な集合力を誇示して見せて、無念にも、そこに集合を果たせなかった人々のハートフルな胸を幾分撫(な)で下ろさせたようである。この国の戦後の、「心の荒廃」を本気で信じて…

失敗のリピーター

心理学者、岸田秀(写真)の言葉に、「失敗は失敗のもと」という卓見がある。 とても説得力のある言葉である。 失敗をするには失敗をするだけの理由があり、それをきちんと分析し、反省し、学習しなければ、かなりの確率で人は同じことを繰り返してしまうと…

「連合赤軍」という闇 ― 自我を裂き、削り抜いた「箱庭の恐怖」  補論

補論 「権力関係の陥穽」 人間の問題で最も厄介な問題の一つは、権力関係の問題である。権力関係はどこにでも発生し、見えない所で人々を動かしているから厄介なのである。 権力関係とは、極めて持続性を持った支配・服従の心理的関係でもある。この関係は、…