2012-07-16から1日間の記事一覧

魔境に入る者

かつて私は、練馬区西大泉町の住宅街の一角で長きに及んで学習塾を運営してきたが、その時代に出来した一つの事件について書いてみる。(写真は西武鉄道池袋線・大泉学園駅) 平穏な日常性で安定的に推移していたが、一つだけ近隣に起こった事件で、今なお気…

赦しの心理学

人が人を赦そうとするとき、それは人を赦そうという過程を開くということである。(画像は、「赦し」をテーマにした映画・「息子のまなざし」より) 人を赦そうという過程を開くということは、人を赦そうという過程を開かねばならないほどの思いが、人を赦そ…

遅れてきた「反抗的なエロス青年」 ―― その情感系の暴走

「卒業して いったい何解ると言うのか 想い出のほかに 何が残るというのか 人は誰も縛られた かよわき子羊ならば 先生あなたは かよわき大人の代弁者なのか 俺達の怒り どこへ向うべきなのか これからは 何が俺を縛りつけるだろう あと何度自分自身 卒業すれ…

豊かさは共同体を破壊する

15~16世紀のヨーロッパ経済の出現は、他の文明を圧倒し、ひとり資本主義的発展のコースに踏み出してしまった。ここから、あらゆるものが変貌を遂げていく。 16世紀から18世紀にかけて展開された、手工業生産中心のプロト工業化を経て、18世紀後半…

ゲームの強迫

高度成長以降、この国は大きく変わってしまった。(写真は集団就職の風景) 固形石鹸で髪を洗っていた時代は、永遠に戻らない。あの頃私たちは、近隣から洩れ聞こえてくるピアノの音色に、何の反応も示さなかった。 思えば、終戦から間もない1949年に制…

怨みの連鎖

占領軍がやって来た。 あっという間に、空気が変色した。先遣隊(注1)を送り出して、敗戦日本の実情をリサーチするほどに入念だったマッカーサー(写真)の警戒心は、敗戦国民のあまりの従順さにあっさりと氷解したのである。 この国の人々は、要求もしない…

男の虚栄、女の虚栄

この国の男たちは、自分たちの非決断を簡単に認めないように見える。 女に渡したヘゲモニーを奪い返すつもりもない。権威に依拠する覚悟にも欠ける。権威を継続させるには相当のエネルギーがいるからだ。そこまで疲れたくないのである。 家庭は癒しの場所で…

規範の崩れ

規範意識の衰弱化という現象が、今、最も集中的に見られる場所は学校空間である。 常に学齢期に達したというだけで、義務教育という名の下で、地域の子供たちが地域の学校に通学するという近代公教育百年余の歴史がなお続いている。 何より、規範意識の衰弱…

神の如き親心

子供たちの外界への適応許容ラインは、身体のレベルに決してとどまるものではない。それは私が、「寒暖差5℃の世界」(注)と呼ぶところのものである 幼少時より注目され、抱えられ、様々なる抗菌グッズにより庇護されてきた、この国の子供たちの自我は、彼…

現代家族の風景

物理的共存を深めるほど、関係は中性化する。これが関係の基本命題である、と私は殆ど独断的に考えている。 中性化とは、一言で要約すれば、「性の脱色化」である。 夫婦と子供二人という核家族の中で、この中性化=「性の脱色化」という現象が多元的に、部…