2012-10-02から1日間の記事一覧

おくりびと(‘08)  滝田洋二郎 <差別の前線での紆余曲折 ―-「家族の復元力」という最高到達点>

1 情感系映像の軟着点 2007年の邦画界の不調を見る限り、邦画人気のバブル現象を指摘する論調があって、「邦画の再立ち上げは容易でなさそうだ」(「asahi com」2008年03月04日)と書かれる始末だった。 ところが、翌2008年の全国…

チェンジリング('08)  クリント・イーストウッド <母性を補完する“責任”という名の突破力>

1 “責任”という名において 世界恐慌直前の、1920年代のロサンゼルス。 ローリング・トゥエンティーズ(狂騒の20年代)とも称され、ヘミングウェイやフィッツジェラルドに代表されるロストジェネレーション(失われた世代)や、幾何学的様式の美術で有…

ニュー・シネマ・パラダイス(「劇場公開版」、「完全オリジナル版」)('89)  ジュゼッペ・トルナトーレ <「回想ムービー」としての「ニュー・シネマ・パラダイス」、その「ごった煮」の締りの悪さ>

1 編集マジックによって蘇生した「劇場公開版」 「グレートハンティング」(1975年製作)、「ポール・ポジション」(1979年製作)「ウイニングラン」(1983年製作)という、ドキュメンタリー作品を作ったイタリア映画の監督がいる。 彼の名は、…

十二人の怒れる男('57)   シドニー・ルメット <「特定化された非日常の空間」として形成された【状況性】>

序 プロット展開の絶妙な映像構築 「17歳の少年が父親殺しで起訴された。死刑は決定的と見えたが、12人の陪審員のうち8番の男だけが無罪を主張する。彼は有罪の根拠がいかに偏見と先入観に満ちているかを説いていく。暑く狭い陪審員室での息苦しくなる…