2012-10-07から1日間の記事一覧

息もできない(‘08) ヤン・イクチュン <インディーズの世界から分娩された、「熱気」と「炸裂」に充ちた「究極の一作」>

1 インディーズの世界から分娩された、「熱気」と「炸裂」に充ちた「究極の一作」 さて、本作の「息もできない」のこと。 この映画のお陰で、私は、主人公のチンピラが、刑務所から出所した直後の父に、血糊が拳につく程の暴力シーンのカットを見て、自らが…

天国と地獄('63) 黒澤 明 <三畳部屋での生活を反転させたとき>

1 緊張感溢れるサスペンスフルな描写の連射 「ナショナル・シューズ」という製靴メーカーの権藤専務は、息子を誘拐したという電話を受けた。ところが、誘拐犯人である電話の男が誘拐した少年は、権藤家の運転手の息子。開き直った誘拐犯人の要求は、運転手…

羊たちの沈黙('91) ジョナサン・デミ  <「羊の鳴き声」を消し去る)より抜粋

1 「構成力」と「主題性」、「娯楽性」、「サスペンス性」がクリアされた一級のサイコ・サスペンス 「The Silence Of Lambs」 これが、本作の原題である。 和訳すると、「羊たちの沈黙」。 この謎に満ちた原題を持つ鮮烈なサイコ・サスペンスは、立場が異な…

靖国 YASUKUNI ('07)   李纓  <強引な映像の、強引な継ぎ接ぎによる、殆ど遣っ付け仕事の悲惨>

1 記録映画作家としての力量の脆弱さ 人の心は面白いものである。 自分の生活世界と無縁な辺りで、それが明瞭に日常性と切れた分だけ新鮮な情報的価値を持ち、且つ、そこに多分にアナクロ的な観劇的要素が含まれているのを感覚的に捕捉してしまうと、「よく…