2013-02-04から1日間の記事一覧

刑事ジョン・ブック 目撃者(‘85)  ピーター・ウィアー <「文明」と「非文明」の相克の隙間に惹起した、男と女の情感の出し入れの物語>

1 非暴力主義を絶対規範にするアーミッシュの村の「掟」の中で ―― 事件の発生と遁走の行方 男と女がいる。 本来、出会うはずもない二人が、一つの忌まわしき事件を介して出会ってしまった。 男の名はジョン・ブック。 未だ独身の敏腕刑事である。 女の名は…

モンスター(‘03)  パティ・ジェンキンス <法治国家で生きる者の宿命としての「地獄巡りの彷徨」の報い>

1 アイリーンの「負の連鎖」と、シリアルキラーにまで堕ちていった現実との相関性① 実際のモデルとなった事件とは無縁に、映像で提示された物語にのみ限定して批評していく。 特段に致命的瑕疵がある訳ではないが、本作はモデルとなった事件をベースにした…

たそがれ清兵衛(‘02)  山田洋次 <「清貧」と呼ぶに相応しい清兵衛像の、肩ひじ張らない恬淡とした生き方>

1 屋上屋を架すようなナレーション挿入の、「過剰なまでの分り易い物語」への振れ方の悪弊 「観る者との問題意識の共有」=啓蒙意識への強い拘泥。 いつからか、山田洋次監督には、これが、そこだけは外せない地下水脈のように、いよいよ累加されてきている…