2013-02-19から1日間の記事一覧

ヒミズ(‘11)  園子温 <行間を埋め潰していく情動過多な構図の連射の騒ぎようと、削り取られてしまったリアリズム>

1 行間を埋め潰していく情動過多な構図の連射の騒ぎようと、削り取られてしまったリアリズム 「そこから逃避困難な厳しくも、辛い現実」 これが、「綺麗事」の反意語に関わる私の定義。 この作り手の映画を貫流していると思われる、物語の基本姿勢である。 …

大鹿村騒動記(‘11)  阪本順治 <寒々しいコメディラインの情景への大いなる違和感>

1 寒々しいコメディラインの情景への大いなる違和感 「前回の『KT』と違うのは、暗いトーンで終わる話ではなかったこと。基本は喜劇ですから」(阪本順治×荒井晴彦 対談:前編 - ソフトバンク ビジネス+IT) これは、阪本順治監督の言葉。 「基本は喜劇」と…

松井秀喜の最終到達点   2012.12.28 in NY

1 語るべき価値を持つ男が語った言葉の重量感 この国で語られる言葉がいよいよ価値を持たなくなった時代の中で、そこに作られた重い空気を、殊更(ことさら)排除する下手な技巧を一切駆使することなく、男はゆっくりと、それまでもそうであったように、考…

特選名画寸評(追加編)

別離(アスガー・ファルハディ) アスガー・ファルハディ監督の前作である「彼女が消えた浜辺」(2009年製作)を初めて観たときの興奮と感動は、今でも脳裏に鮮烈に焼き付いて離れない。 それは、当局との検閲との関係で、愛らしい子供を主人公にした癒…