2013-03-28から1日間の記事一覧

ヒューゴの不思議な発明(‘11) マーティン・スコセッシ <「映画好きの観客」限定の物語の訴求力の脆弱さ>

1 「世界が一つの大きな機械なら、僕は必要な人間だ」 「何にでも目的がある。機械でさえ。時計は時を知らせ、汽車は人を運ぶ。皆、果たすべき役割があるんだ。壊れた機械を見ると、悲しくなる。役目を果たせない。人も同じだ。目的を失うと、人は壊れてし…

灼熱の魂(‘10) ドゥニ・ヴィルヌーヴ <「衝撃的なラスト」に印象誘導するストーリーが失った「映像総体の強度」>

1 中東を巡る不安含みの旅が到達した悲劇の極み カナダのケベックに住む、双子の姉弟がいる。 ジャンヌとシモンである。 彼らの母親のナワルは、プールサイドで視認した「何か」によって体調を崩し、呆気なく逝去する。 しかしナワルは、謎めいた遺言を残し…

それでもボクはやってない('07)  周防正行 <警察・検察・司法の構造的瑕疵への根源的な問題提示>

1 警察・検察・司法の構造的瑕疵を根源的に問題提示した、秀逸な社会派の一篇 本作は、人に言えないほどの辛い経験の混乱の中で、相当程度、曖昧となった少女の記憶が、刑事の情報誘導によって補完されることで、矛盾なく固まったと信じる主観の稜線上に、…