2013-05-18から1日間の記事一覧

終の信託(‘12)  周防正行 <根源的な問題の全てを、医師たちに丸投げする無責任さを打ち抜く傑作>

序 根源的な問題の全てを、医師たちに丸投げする無責任さを打ち抜く傑作 素晴らしい映像だった。 ラスト45分におけるヒロインの叫びには、震えが走るほどだった。 それは、そこに至るまでの殆ど無駄のない伏線的描写を回収していく、周防監督らしい知的な…

戦場のピアニスト('02)  ロマン・ポランスキー <「防衛的自我」の極限的な展開の様態>

1 5点のうちに要約できる映画の凄さ この映画の凄いところは、以下の5点のうちに要約できると思う。 その1 観る者にカタルシスを保証する、ハリウッド的な「英雄譚」に流さなかったこと。 その2 人物造形を「善悪二元論」のうちに類型化しなかったこと…

第三の男('49) キャロル・リード <「戦勝国」という記号によって相対化された者たちとの、異なる世界の対立の構図>

1 「闇の住人」の視線を相対化する映像構成 時代の大きな変遷下では、秩序が空白になる。 空白になった秩序の中に、それまで目立たなかったような「闇」が不気味な広がりを見せていく。 「闇」は不安定な秩序を食い潰して、いつしか秩序のうちに収斂し切れ…