2013-07-21から1日間の記事一覧

ピクニックatハンギング・ロック(‘75) ピーター・ウィアー <浮遊感覚で侵入してしまう人間が遭遇する「異界」の破壊力>

1 「語り過ぎない映画」の残像感覚の凄み 一度観たら一生忘れない映画というのが、稀にある。 映画の残像が脳裏に焼きついて離れないのだ。 それらの映画の特色は、「語り過ぎない映画」であるということ。 語り過ぎないから、観る者に想像力を働かせる。 …

刑事ジョン・ブック 目撃者(‘85)  ピーター・ウィアー <「文明」と「非文明」の相克の隙間に惹起した、男と女の情感の出し入れの物語>

1 非暴力主義を絶対規範にするアーミッシュの村の「掟」の中で ―― 事件の発生と遁走の行方 男と女がいる。 本来、出会うはずもない二人が、一つの忌まわしき事件を介して出会ってしまった。 男の名はジョン・ブック。 未だ独身の敏腕刑事である。 女の名は…

トゥルーマン・ショー('98)  ピーター・ウィアー <コメディラインの範疇を越える心地悪さ ―― ラストカットの決定力>

1 コメディラインの範疇を越える心地悪さ ―― ラストカットの決定力 「他の番組を。テレビガイドは?」 ラストカットにおける視聴者の、この言葉の中に収斂される文脈こそ、この映画の全てである。 テレビ好きな二人の警備員によるこの台詞は、本作がテレビ…

危険な年('82) ピーター・ウィアー <自死によって炸裂した「物語のライター」の痛ましき愛国心>

1 理想主義者の本質を隠し切れない「謎の男」の困難な闘い 本作は、社会派ムービーの取っ付きにくさをラブロマンスで希釈することで、本来的な「主題が内包する問題解決の困難さ」を提示した作品である。 この手法が成功したか否かについては、観る者によっ…