2013-11-01から1日間の記事一覧

細雪(‘83) 市川崑<壊れゆく、ほんの少し手前の風景が一番美しい>

1 「世間智」と「世間無智」のコンフリクトの不毛性 昭和一桁の5年前、大阪市天王寺の上本町(船場から移転)で、古い暖簾を誇る蒔岡家に起こった忌まわしき事件。 それは、末娘で四女の妙子が、船場の貴金属商・奥畑の息子(啓ぼん)と引き起こした駆落ち…

人は犯した罪をどこまで贖うことができるのか ―― 映画「つぐない」が問う根源的提示

イギリスのジョー・ライト監督の映画「つぐない」(207年製作)を観たとき、「贖罪のプロセス」の重さ=「赦し」の重さというテーマについて深く考えざるを得なかった。 以下、拙稿・「人生論的映画評論・つぐない」をベースに、このテーマについて考えて…

博士の異常な愛情('63) スタンリー・キューブリック <「風刺」、或いは、「薄気味悪さ」や「恐怖」という、ブラックコメディの均衡性>

1 「R作戦」、「皆殺し装置」の発動、そして「優生思想」の突沸 何とも緩やかななメロディに乗って、空中給油シーンから開かれた長閑(のどか)な映像は、一転してハードな場面にシフトする。 米国の戦略空軍基地司令官であるリッパー将軍が、突然発狂し、…