2013-04-01から1ヶ月間の記事一覧
序 癖になるほど面白いオフビートコメディの最高傑作 何度観ても、笑いを堪えられず、ラストの「小さな救い」では心を打たれ、涙を誘われてしまう80分間の短尺の映画に詰まっているものは、オフビート感満載の滋養ある青春ドラマの訴求力の結晶である。 ひ…
1 「疑似コミュニティ」の広がりという、「オタク」の閉塞感を突き抜けて開かれたゾーン この映画によって癒される人々がいて、商業的に成功すれば、この上なく悦ばしいことであるだろう。 しかし、映画批評という視座で捕捉した場合、この映画のコメディの…
1 夜の琵琶湖の不吉 「『雨月物語』の奇異幻怪は、現代人の心にふれる時、更に様々の幻想をよび起す。これはそれらの幻想から、新しく生まれた物語です」 これが、映画「雨月物語」の導入となった。 「戦国時代、ある年の早春。近江国琵琶湖の北岸・・・」とい…
1 「癒しの空間としての家族」という物語と、家族外人間関係における道徳観念が内包する欺瞞性 私たちが殆ど疑うことがない「癒しの空間としての家族」という物語と、とりわけ、この国において、家族外人間関係における道徳観念が内包する欺瞞性を、ブラッ…
1 「躾の悪い山猿」との格闘技の世界が開かれて ヘレンへの「教育」の困難さは、イメージ喚起能力の形成が、ヘレンの幼時的自我を脱却させる唯一の方法論であるにも関わらず、それを容易に持ち得ないことにあった。 「物」には言葉があり、それぞれ意味を表…
1 「生活知」と「人生知」 「老年期 生き生きしたかかわりあい」(E.H.エリクソン他著、朝長正徳・梨枝子訳 みすず書房刊)によると、「老年期」のステージにおいては、「統合」と「絶望」という二つの内面世界の葛藤があり、その葛藤をバランス良く上手…
1 地獄を通過して来た者の健全な復元は困難である これは、加害者であれ、被害者であれ、「地獄を通過して来た者の健全な復元は困難である」という問題意識の下、本来、特化された「狂気」の空間で死ぬべきはずだった男と女が、時代が移ろっても、空洞化さ…
1 簡潔な粗筋の紹介 本稿に入る前に、以下、本作の粗筋を簡潔にまとめておこう。 ピアノ教師として女子刑務所に赴任して来た80歳のクリューガーは、新入りのジェニーが机を鍵盤代わりにして指を動かす姿を見て、一瞬にして抜きん出た才能を認知する。 「…
1 肝心の局面で、本気の勝負に打って出た男たちの物語 かつて、淀川長治が産経新聞のコラムで書いたように、「フル・モンティ」とは「すっぽんぽん」を意味するというのが定説である。 また、「20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン株…
1 今、まさに、防ぎようがない亀裂が入った「プライドライン」の防衛的武装の城砦 特定のフィールドで功なり名遂げた者が、そのフィールドで手に入れた肯定的自己像を放棄することが困難であるのは、その者が拠って立っていたフィールドの総体を否定するこ…
1 「一対三」の捩れ方を必至にした「当事者熱量」の意識の落差 子供同士の喧嘩を通して「事故」が発生し、そのことで「加害者」と「被害者」という風に仕分けられたとき、状況の中枢にいる子供たちの「当事者性」が、その子供の親たちに引き渡されるのは社…
1 男娼として夜の街に立って テキサス生まれのカントリーボーイが、「夢の都・ニューヨーク」に旅立った。 男の名はジョー。 その目的は、男性的魅力に溢れていると信じる自分の肉体を売って、ひと稼ぎしようというもの。 その脳天気な若者のターゲットは、…