2013-05-01から1ヶ月間の記事一覧
1 帰還者の期間限定の一時帰国 ―― 物語の前半の簡単な梗概 かつて、「在日朝鮮人の帰還事業」によって、16歳で海を渡った在日コリアンのソンホが、「朝鮮総連」(在日本朝鮮人総聯合会)と思しき北朝鮮系の組織の幹部(東京支部の副支部長)の父の尽力も…
1 EU各国が内包するシビアな国際政治のリアリズム ヨーロッパの国境の垣根を緩めたシェンゲン協定や、ユーロの導入、共通農業政策等によって軟着したかに見えた、「ヨーロッパの多様性における統一」という歴史的大実験が、ギリシャの財政破綻の問題に端…
1 「神の声」に導かれたボールパーク 「僕の父はジョン・キンセラ。アイルランド名だ。1896年、ノースダコタ州で生まれ、大都会を見たのは、欧州から帰還した1918年。シカゴに住みつき、ホワイトソックス・ファンになった。1919年のワールドシ…
序 根源的な問題の全てを、医師たちに丸投げする無責任さを打ち抜く傑作 素晴らしい映像だった。 ラスト45分におけるヒロインの叫びには、震えが走るほどだった。 それは、そこに至るまでの殆ど無駄のない伏線的描写を回収していく、周防監督らしい知的な…
1 5点のうちに要約できる映画の凄さ この映画の凄いところは、以下の5点のうちに要約できると思う。 その1 観る者にカタルシスを保証する、ハリウッド的な「英雄譚」に流さなかったこと。 その2 人物造形を「善悪二元論」のうちに類型化しなかったこと…
1 「闇の住人」の視線を相対化する映像構成 時代の大きな変遷下では、秩序が空白になる。 空白になった秩序の中に、それまで目立たなかったような「闇」が不気味な広がりを見せていく。 「闇」は不安定な秩序を食い潰して、いつしか秩序のうちに収斂し切れ…
1 「現代の青春」の空気感を鋭く切り取った青春ドラマの大傑作 映画を観ていて、涙が止まらなかったのは、いつ以来だろうか。 外国映画なら人間の尊厳を描き切った、ワン・ビン監督の「無言歌」(2010年製作)という生涯忘れ難い作品があるが、邦画にな…
序 「誰かが行かねば、道はできない」 ―― 本作の梗概 「誰かが行かねば、道はできない。日本地図完成のために命を賭けた男たちの記録」 この見事なキャッチコピーで銘打った本作の梗概を、公式サイトから引用してみる。 「日露戦争後の明治39年、陸軍は国…
1 「アナーキーな革命家」を立ち上げていく「アンチのヒーロー」 良かれ悪しかれ、ニューシネマの最終地点辺りに構築された、ジャック・ニコルソン主演の本作は、そこに濃度の差こそあれ、多くのニューシネマに共通する、「破壊されし、アンチのヒーロー」…
1 「正常」と「普通」という記号を手に入れんとする男の防衛戦略 スタイリッシュな映像美の鮮度が全く剥落することがないのに驚かされるが、何より特筆すべきは、スタイリッシュな映像が提示した絵柄が、圧倒的な色彩感覚による対比効果や、緻密な光線支配…
1 局面防衛戦略としての摩訶不思議な「夢」の世界への脱出行 「反復」→「継続」→「馴致」→「安定」という循環を持つ、「日常性のサイクル」の継続力が、ほんの少し劣化し、それを自家発電させていく仕事のうちに気怠さが忍び寄ってくるようなときに、束の間…
1 「感動譚」を成就させる推進力として駆動させた文化としての「風俗」 難病と闘う孫を、その孫を愛する祖母が助ける。 「あの子のためなら何でもするわ。後悔なんて少しもよ。家くらい何なの」 冒頭シーンで、既に家を手放した祖母が、息子に吐露した言葉…