2013-09-01から1ヶ月間の記事一覧
1 宗教的儀式の色彩を纏った風景が包摂する、洞窟壁画というアートの世界で滾った、時空を越えた文化のリレー 「これらの絵こそ、長い間、忘れられた夢の記憶だ。この鼓動は彼らのか?我々のか?無限の時を経た彼らのビジョンが、我々に理解できるだろうか…
1 日本的な「アッパーミドル」に絞り込んだ、「古き良き日本の家族の原風景」を印象づける物語構成 ファーストカットで、いきなり驚かされた小津映画のオマージュ(「浮草」)や、明らかに、そこもまた小津映画の影響を感じさせる、あまりに流暢で、澱みの…
1 行間を埋め潰していく情動過多な構図の連射の騒ぎようと、削り取られてしまったリアリズム 「そこから逃避困難な厳しくも、辛い現実」 これが、「綺麗事」の反意語に関わる私の定義。 この作り手の映画を貫流していると思われる、物語の基本姿勢である。 …
1 完成形の作品が居並ぶ稀有な映画監督の、優れて構築力の高い映像の凄み ハネケ監督の映画を観た後、必ずと言っていいほど、私は次の映画の批評に入る気分が失せてしまっている。 ハネケケ監督の作品で、映像総体の完成度のハードルが一気に高くなってしま…
1 「過干渉」という名の「権力関係」の歪み かつて、バレエダンサーだった一人の女がいる。 ソリストになれず、群舞の一人でしかなかった件の女は、それに起因するストレスが昂じたためなのか、女好きの振付師(?)と肉体関係を持ち、妊娠してしまった。 …
1 吃音症は言語障害である 本作から受けるメッセージを誤読する不安があるので、これだけは理解する必要がある。 それは、現在、多くの国において、吃音症が言語障害として認定されているという点である。 且つ、言語障害として認定されていながら、原因不…
1 「年中行事」を「通過儀礼」に変換させた物語の眩い輝き ―― その1 地方都市にある私立櫻華学園高校演劇部では、創立記念日にチェーホフの「櫻の園」を上演することが、桜咲く陽春の日の伝統的な「年中行事」となっていて、多くの不特定他者の観劇を吸収…
1 エルドラドへの艱難辛苦なアマゾン下りの探検譚 1560年末、ピサロ率いるスペイン遠征隊がペルー高地に到着後、消息を絶つ。 随行した宣教師カルバハルの日記が、僅かにこの記録を伝える。 これが、冒頭のキャプション。 ポポル・ヴーの荘厳なBGMの…
1 「絶対経験」の圧倒的な把握力 「どんな経験でも、しないよりはした方が良い」と思われる経験を、私は「相対経験」と呼んでいる。 私たちが経験する多くの経験は、この「相対経験」である。 この「相対経験」は、心に幅を作るトレーニングでもある。 心の…
1 壮絶なる「全身プロフェッショナル」の俳優魂を炸裂させた完璧な結晶点 微塵の妥協を許さないプロフェッショナルな映画作家の手による、「全身プロフェッショナル」の映画の凄みを改めて感じさせてくれる一級の名画である。 1か月のロケの中で、「演技指…
1 「思春期爆発」に流れない、「思春期氾濫」の「小さな騒ぎ」の物語 島根県の分校を舞台にした、天然キャラのヒロインの、純朴で心優しきキャラクターを、観る者に決定付けた重要なシーンがある。 天然キャラのヒロインの名は、右田そよ(以下、そよ)。 …
1 受難の文学としての「源氏物語」 ―― その解放の雄叫び 日本近代史の中で、「源氏物語」は受難の文学だった。 「庶民感覚から遊離した『有閑階級の文学』」という理由で、プロレタリア文学から批判の矛先を向けられ、「ごく普通の人生を生きる者としての人…