2014-04-01から1ヶ月間の記事一覧

トト・ザ・ヒーロー(‘91) ジャコ・ヴァン・ドルマル <人生の行程で起こり得る多くのものが詰まった、反転的な「人生賛歌」のメッセージ>

1 観る者の視覚に強烈に鏤刻する名画の圧倒的な切れ味 これまで観た多くの映画の中で、初見時に、言葉に言い表せないほどの感動と鮮烈なインパクトを受けた作品の一つ。 後にも先にも、これほどの独特な筆致で描かれた作品と出会った記憶はない。 ジャコ・…

JAWS/ジョーズ(‘75)  スティーヴン・スピルバーグ <「三人の男VS人食い鮫」の直接対決を本丸の物語にした、海洋アドベンチャー映画の決定版>

1 「三人の男VS人食い鮫」の直接対決を本丸の物語にした、海洋アドベンチャー映画の決定版 アメリカ東海岸の海辺の町・「アミティ島」(架空の島)を餌場と決めたホオジロザメから、海水浴場というレジャーランドを守る争いは、「人がいる限り襲う、縄張り…

コード・アンノウン(‘00)  ミヒャエル・ハネケ <パリの街の見えにくい排他的な陰翳感を吹き払う、見事に調和された太鼓の律動感>

1 「知っていることと、理解することは別物だ」 ―― 困難な「知的過程」を開く作業の大切さ 全てが完成形のハネケ監督の秀作群の中で、「タイム・オブ・ザ・ウルフ」(2003年製作)、「愛、アムール」(2012年製作)と並んで、私に深い余情を残すに…

明日の記憶(‘05) 堤幸彦 <「夫婦」という記号だけが置き去りにされた、一人の男と一人の女の物語>

1 屋上の縁に立って、不安の極点を身体表現する男を襲う悪魔の鼓動 いつも、それは唐突にやって来る。 唐突にやって来るから困惑し、動揺し、狼狽する。 狼狽してもなお、より深刻になる状況に翻弄され、内側で何かが煩く騒いで止まなくなる。 内側で確実に…

ザ・マスター(‘12) ポール・トーマス・アンダーソン <帰還すべき場所に戻れなかったばかりに、アナーキーな「移動」に捕縛されてしまった男の悲哀の物語>

1 どのよう振舞っても救われようがない人生の、その孤独の極相 どのよう振舞っても救われようがない人生の、その孤独の極相。 孤独の極相の際(きわ)を匍匐(ほふく)する男の、遣り切れない人生の断片を描き切ったこの映画を、私はこよなく愛す。 それが…