2014-07-01から1ヶ月間の記事一覧
1 地雷回収を差配する少年 心の闇を引き摺る少女 「空まで奪われちまった。水もなければ電気もない。どれもこれも、サダムのせいだ!戦争が始まろうとしているのに、ニュースも見られない」 初老の男が、そんな愚痴を叫んでいた。 女房がトルコ側にいると言…
かつて人々は、黄昏の空に一日の活動の終焉を読み取り、暗黒に近い長い夜の時間を恐れ、為す術がなく眠りに就いた。 夜と昼は黄昏の空によって切れていて、それは決して地続きになってはならない、二つの別々の世界であった。 子供たちを畏怖させる怪談話が…
深酒に頼らざるを得ない、不眠の日々を送る男を主人公にした小説がある。 森内俊雄の「氷河が来るまでに」(河出書房新社刊)である。 この小説を、私は二度読んだ。 現代文学の中で、私は、底知れぬほど苦脳する男の心の風景を描いた小説を、最も愛好する。…
1 「理想家族」が受難した「対象喪失による悲嘆」 家族から愛されていた、息子の事故死によって、突然、家族成員の自我を撃ち砕くに足る衝撃が走った。 息子の名はアンドレア。 「理想家族」が受難した「対象喪失による悲嘆」は、当初、一見、冷静に受け止…
1 「権力関係」の発生から、「権力関係」の強化という、徒ならぬ事態への風景の変容 「同じ過ちを、絶対に繰り返さないで。客を装って本部の人間が来るらしいから。清潔第一よ。金曜の夜は戦争になるわ」 前日に冷蔵庫を閉め忘れた者がいて、そのためベー…
1 山下ワールドへの「原点回帰」のミニマリズムの逸品 少し古いが、「大学解体」をスローガンにした全共闘時代を描いた、ユーモアの欠片も拾えない「マイ・バック・ページ」(2011製作)の映像化には、正直、驚かされたが、一貫して、「綺麗事」、「情…
1 荒れる男 祈る女 この日もまた、男は荒れていた。 ノミ屋で大敗したストレスが炸裂し、あろうことか、愛犬を蹴り殺してしまうのだ。 悔いても、いつも遅い。 身体反応としての情動が一気に噴き上げ、不快な感情の集合が不必要に炸裂し、攻撃的行動を抑制…
1 「攻撃的狂気」を屠っていく「防衛的正義」の「悪者退治」の物語 人間心理の歪みについての批評の余地を残すサイコサスペンスなら、もう少し、人間の心理の恐怖感がリアルに再現できたにも拘らず、残念ながら本作は、その辺りの冷厳なリアリティが欠けて…
1 継続的に暴力を受けた者の圧倒的な恐怖感の欠落 「ミザリー」というサイコもどきのホラー映画を観て、正直、辟易した。 重傷を負って馴れない車椅子を駆使する流行作家が、「恐るべき殺人鬼」によって、両足を巨大なハンマーで打ち砕かれ、身体機能が無能…