2015-01-01から1ヶ月間の記事一覧

ブレードランナー('82) リドリー・スコット <人間とヒューマノイドの鑑別テストを必要とする、大いなる滑稽さ>

2 「廃棄処分」の後の、「睦みの世界」への投げ入れ 「21 世紀の初め、アメリカのタイレル社は人間そっくりのネクサス型ロボットを開発。それらは“レプリカント”と呼ばれた。特にネクサス6型レプリカントは、体力も敏捷さも人間に勝り、知力も、それを作…

炎のランナー('81) ヒュー・ハドソン <ユニオンジャックの旗の下に包括しようとする意思が溶融したとき>

1 鋭角的な攻撃性を輻射して止まない男 1924年のパリ・オリンピックの陸上競技で、英国に二つの金メダルをもたらした実話のランナーを描いた、この著名なアカデミー作品賞の中に、本作の基幹のメッセージとも言うべき極めて重要な描写が2か所ある。 本…

ペコロスの母に会いに行く(‘13)  森崎東 <流れゆくまで繋いだ時空に嵌り込んだ者の、記憶の復元の融合感>

1 「何もせんで、怒らんと。もう何もせんけ!」 「はい、岡野です。はあ、オレって誰?まさきか。まさき、どげんしとる?え?事故に示談?ちょっと、待っとって・・・」 オレオレ詐欺の電話に出たみつえの反応である。 孫のまさきからの電話に誠実に対応しよ…

そして父になる(‘13)  是枝裕和 <「眼差し」の化学反応 ―― その融合にまで内視する男の風景の変容の物語>

Ⅰ 「事故」の発生 これは、「資本主義の戦士」にシンボライズされ、幾重にも層化されたラベリングで武装した、「眼差し」という、格好の非言語コミュニケーションに潜り込んだ男の、その心の風景の変容を精緻に描き切った一代の傑作である。 微妙に揺れ動く…

映画散策 この逸品 <邦画編>

中枢神経の脊髄が骨折することで運動、知覚機能、自立神経の障害を発現する脊髄損傷の中でも、「ブラウン・セガール症候群」(脊髄半側障害症候群/注)という厄介な疾病に罹患してから15年間、鬱病にならないためと、「無駄な時間」を浪費したくないとい…