2017-07-01から1ヶ月間の記事一覧

教育とは自由の使い方を教えることである

1 よりマシな大人の介在が子供の〈自由〉を保証する 「子供の非行は全て大人が作る」という一般に流布された把握に、相当の真実性があることを認めることは、子供が「快・不快の原理」を延長させ、「好き放題」に生きるという立ち入り禁止の「子供共和国」…

振れ幅の大きい複雑な人間が縋り付く、ごく普通のサイズのヒューマニズムに収斂される「弱さの中のエゴイズム」 ―― 映画「羅生門」の本質

1 高貴な侍夫婦が深い森の奥を通りかかった時、その事件は起こった 邦画史上、最高の作品を選べと言われたら、私は躊躇なく、以下の3作を挙げるだろう。 成瀬巳喜男監督の「浮雲」・今村昌平監督の「赤い殺意」、そして、本稿で言及する黒澤明監督の「羅生…

それ以外にない場所を持ち、それ以外にない人生を生き、そして土に還っていく ――  或いは、共同体の底力

1 大旱魃から県民を救った讃岐農民の血の滲むような努力 瀬戸内海の小島に「農業滞在型農園施設」(ラントゥレーベン大三島=今治市滞在型農園施設)というスポットがあり、そこに都会生活をしていたプログラマーが移住し、3年間、島の人たちとの交流を通…

認知症罹患者の辛さの本質は、「約束された喪失感」を意識することの恐怖にある

1 「癌ならよかった。癌だったら恥ずかしくない。癌なら皆で、ピンクリボンをつけて、募金活動をするから、感じなくて済むわ」 日常生活に破綻をきたさない軽度認知障害(MCI)と切れ、ニューロン(脳の神経細胞)の脱落(人の脳の委縮は20~30歳を…

三段跳びをやってのけた男 ―― 文化大革命という狂気を越えて

1 三段跳びをやってのけた男 ―― 文化大 革命という狂気を越えて 蒋介石に忠誠を誓った国民党の青年将校がいた。 ソビエト連邦政府が支援する共産党との国共内戦での敗退によって、台湾に脱出した蒋介石に随行せず、同様に、国民党の軍人である叔父が殺害さ…

映画「花様年華」における究極ののエロティシズム

序 「21世紀の偉大な映画ベスト100」の慧眼なる評価 2016年8月に、英BBCが企画した、「21世紀の偉大な映画ベスト100」が発表された。 36の国と地域から177人の映画評論家がベスト10を提出。各1位に10点、2位に9点とポイントを…