2018-01-01から1ヶ月間の記事一覧

人は皆、自分自身をどこまで把握して生きているのか ―― 映画「嘆きの天使」の「予約された酷薄さ」

1 「私的自己意識」と「公的自己意識」の落差 作品の良し悪しとは無縁に、一度観たら、絶対に忘れられない映画が、稀にある。 80年前の映画が、なお、私の脳裏にこびりついて離れない。 「嘆きの天使」 ―― これが、その映画の名である。 1930年の古典…

恐怖感が人間を守る

1 扁桃体は脳の警報装置である 「人間が進化的に作り出した必然的な感情」。 このような感情を、私たちは不安と呼ぶ。 不安感情は、「今・ここ」のみに生存するだけの他の動物には、殆ど見られない感情である。 動物の寿命は、人間の寿命である「生理的寿命…

「思うようにならない人生の極みのさま」 ―― 人生の真実を描き切った成瀬映画の真骨頂 その2

16 声を上げ、たじろがず、情を守り、誇りを捨てなかった女 ―― 映画「あらくれ」 この映画は、一言で言えば、「声を上げ、たじろがず、情を守り、誇りを捨てなかった女」の物語である。 実際、映像の中で、女(お島=高峰秀子)は声を上げ、主張し、自分の…

「思うようにならない人生の極みのさま」 ―― 人生の真実を描き切った成瀬映画の真骨頂

1 人間の運命の、多岐にわたるリアルの有りようをフィルムに刻み付けた映画監督 私はハッピーエンドの映画が嫌いだ。 「予定調和のハッピーエンド」 ―― こうなると、もうお手上げである。 人生が「予定調和」に流れていかないからこそ、人間の運命の、多岐…

「共食文化」の包括力

私たち人類の祖先は、相互の信頼関係を強化するために、食料分配という行為を利用し、仲間同士の親睦を深めていった。 そこで構築された多様な協力体制が、集団の堅固な関係を作り上げる基礎的役割を果たしたと言っていい。 「食料分配」という巧みな戦略は…