2018-03-01から1ヶ月間の記事一覧

噂の心理学 ―― 或いは、セカンドレイブの包囲網の只中で闘うジャーナリスト

1 噂⇒デマの怖さを映画化した秀作 「噂の二人」という演劇ベースの映画がある。 アメリカの左派の劇作家・リリアン・ヘルマンの原作で、一度観たら忘れない、ウィリアム・ワイラー監督の秀作である。 粗筋を簡単に紹介すると、以下の通り。 ―― 学生時代から…

「健全な社会」は適度な「不健全な文化」を包摂する

1 「宗教国家」・アメリカの中枢に風穴を開けた男の物語 ラリー・フリントという男がいる。 赤面するほど過激なポルノ雑誌「ハスラー」(注1)を創刊し、「ポルノ王」を自称する実在人物である。 「カッコーの巣の上で」・「アマデウス」で知られる、ミロ…

「平昌五輪」 ―― 近代スポーツの宿命と結晶点

1 自らが背負った負荷を昇華する高梨沙羅の「恐怖超え」 近代スポーツは、観る者の好奇心に睦み合うように作られていく。 そこで作られた新種のスポーツは、時代の鮮度が削(そ)がれることがないように、万全のルールを作り、「より面白く」・「より緊張感…

「感情の氷河化」 ―― 「べニーズ・ビデオ」、その「分らなさ」という衝撃

1 観る者の「ミラーニューロン」の活動電位が鈍化し、少年への「感情移入」を遮断させる肌寒き風景 「ホラーもSFも、アドベンチャーも、自分が状況を支配できるという幻想を持つことから生まれる。監督は状況を支配できる。映画は監督の創作だから。観客…

ミヒャエル・ハネケ監督を全否定するシネフィルたちの性質(たち)の悪さ

1 「不快なハネケ」の「不快な映画」という捨て台詞の遣り切れなさ ミヒャエル・ハネケ監督の映画ほど物議を醸し、厭悪(えんお)される作品もないだろう。 「ファニーゲームを観た。リアル過ぎて最高に気分が悪くなった。なんだこれ、鬼畜。一生みないね。…