2018-07-01から1ヶ月間の記事一覧

「妬まず、恥じず、過剰に走らず」という「分相応」の「人生哲学」 ―― その突破力の脆弱性

1 「バランスの人生哲学」という「分相応主義」のイデオロギー 稲垣浩監督の「無法松の一生」という圧倒的に感動的な映画を観終わった後、私の意識をしばらく支配した言葉がある。 「分相応」(ぶんそうおう)という言葉である。 いつまでも私の脳裏に焼き…

二人で選ぶ邦画70選

アトランダムに選んだランキングなしの、主観的な「秀作映画」の抜粋である。 一般的に評価されている作品であっても、共に気に入った作品が前提条件なので、漏脱(ろうだつ)されている「秀作映画」が多くあるが、どこまでも、私たち夫婦の拘泥(こうでい)…

道理を超えた矛盾と齟齬を描き切った、「掟」と「掟」の衝突の物語

1 文革の被害少年と加害少年が、手を握り合って立ち上げた記念碑的映像 映画「黄色い大地」は、私にとって「さらば、わが愛/覇王別姫」と並んで、陳凱歌(チェン・カイコー)監督の秀作の中で、心が震えるような感銘を覚えた作品である。 これほどの作品を…

「幕末」とは何だったのか

1 「黒船」がやって来た 大老・井伊直弼が暗殺され、明治維新へと猛(たけ)り立っていく激動の歴史の起点となった、世に言う「桜田門外の変」。 一切は、1853年に起こった「黒船来航」に淵源(えんげん)する。 「アメリカ合衆国大統領国書」が幕府に…

キッズ・リターン('96) 北野武 <反転的なアファーメーション、或いは、若者たちへの直截なメッセージ>

1 視界の見えない未知のゾーンから生還したアファーメーション 殆どそこにしか辿り着かないと思えるような、アッパーで、脱規範的な流れ方があって、その流れを自覚的な防衛機制によって囲い込む機能を麻痺させた結果、そこにしか辿り着かない地平に最近接…