2021-02-01から1ヶ月間の記事一覧

ビューティフル・デイ('17)    リン・ラムジー

<反復的、且つ、侵入的で、苦患の記憶が想起し続ける冥闇の世界に閉じ込められた男の悲哀が漂動する> 1 「何が起きているのか、さっぱり分からない」と漏らす男の少女救済譚 誘拐された少女を連れ戻すという闇の仕事で生計を立て、老いた母と暮らす男・ジ…

ドラマ特例篇 「この戦は、おのれ一人の戦だと思うている」 ―― 「『麒麟がくる』本能寺の変」・そのクオリティの高さ

1 寂寥感漂う悲哀を映し出す究極の「盟友殺害」の物語 「『麒麟がくる』・本能寺の変」(第59作・最終回)を観て、涙が止まらなかった。 テレビを観ない習慣が根付いていながら、「麒麟がくる」だけは別格だった。 理由は、本木雅弘が斎藤道三を演じると…

東ベルリンから来た女(‘12)  クリスティアン・ペツォールト

<凛として越境し、地域医療を繋いでいく> 1 「私が地方に飛ばされた理由も知っているのね…孤立させてもらうわ」 1980年夏 旧東ドイツ ベルリンの壁崩壊後の9年前。 「孤立しない方がいい。ここの職員は敏感だ。首都ベルリン、大病院…みんな、卑屈に…

心と体と('17)   イルディコー・エニェディ

<「個人的主観的リアリティ」を共有する男と女が、立ち塞がる障壁を乗り越えていく> 1 「それでは、今夜も夢で会いましょう」 ハンガリーのブダペスト郊外(映画では、字幕・台詞の提示なし)。 食肉加工工場で、2カ月の産休に入った食肉検査員の代理と…