2021-06-01から1ヶ月間の記事一覧

午後8時の訪問者('16)   ダルデンヌ兄弟

<「自罰的贖罪」としての「向社会的行動」に振れる医師の「道徳的な真実」> 1 恐怖で呼吸が荒くなる診療所の女性医師 「一つだけ直す点を言うわ…診断の下し方よ。患者の痛みに反応しすぎるの」 「直りません」 「自分の感情を抑えなさい」 診療所の女性医…

映画短評  幸福なラザロ('18)   アリーチェ・ロルヴァケル

<不特定他者にまで「安寧」を供給する「善なるもの」は、時代を超えて希求される> 極端なほど善人だが、その「善人性」を認知されても、村の男たちからは尊厳を持って愛されることはない。 本来的な善人の使い勝手の良さは、「飛び抜けたお人好し」として…

斬、('18)   塚本晋也斬、('18)   塚本晋也

<やられても、やり返さない「正義」の脆さ> 1 「私も人を斬れるようになりたい、私も人を斬れるようになりたい!」 日本刀の制作工程から開かれるオープンシーン。 杢之進(もくのしん)が、農民の市助に木刀で剣術を教えている。 市助の姉・ゆうに、昼食…

毒気なき「絶対反戦」のメッセージを異化する映画「小さいおうち」('14) ―― その異様に放つ「切なさ」   山田洋次

<毒気なき「絶対反戦」のメッセージを異化する映画の、異様に放つ「切なさ」> 1 「坂の上の小さいおうちの恋愛事件が幕を閉じました」 いつものように、毒気のない反戦メッセージが随所にインサートされているが、思いの外、「基本・ラブストーリー」の映…