1 「うぉー!これで赤ちゃんとスパイごっこができる!」 「のり君、知らん?」 放課後、友達に訪ね歩く小学生5年生の田中あみ子(以下、あみ子)。 見つからず家に帰ると、母が開いている書道教室を覗くと、そこにのり君がいた。 生徒の一人の坊主頭が、「…
1 「その時、思ったのです。これは何かの啓示で、私の行いは誤りであり、金かは返すべきなのだと」 イランの世界遺産・ペルセポリス遺跡があるシラーズの街。 元妻の兄・バーラムからの借金を返済できずに告発され、刑務所に服役しているラヒム。 2日間の…
1 「その時、思ったのです。これは何かの啓示で、私の行いは誤りであり、金かは返すべきなのだと」 イランの世界遺産・ペルセポリス遺跡があるシラーズの街。 元妻の兄・バーラムからの借金を返済できずに告発され、刑務所に服役しているラヒム。 2日間の…
1 「今回のクール、視聴率から何まで全部勝って、覇権を取ります!」 「どうしてアニメ業界なんですか?」 「誰かの力になる、そんなアニメを作るためです」 「国立大学を出て県庁で働いているでしょ?なんでわざわざ?」 「王子千晴(おうじちはる)。王子…
1 「これで、家族だな」「親分、宜しくお願いします」 1999年。 覚醒剤の売買をシノギとしてきたヤクザの父親の葬儀に、バイクで駆けつけた山本賢治(以下、山本)。 顔見知りのマル暴の大迫(おおさこ)に声をかけられた。 「お前は、父親みたいになん…
1 「お前に手を出す者は、俺が殺す。俺がお前を殴ったら自殺する」 少女アレクシアは、父親が運転する後部座席から運転席を蹴り続け、運転を妨害する。 更にシートベルトを外して立ち上がるアレクシアを制止しようと、父親が後ろを振り向いたところで車は大…
1 「この街に人生のすべてが詰まってる」 北アイルランドの首都ベルファストの、現代の美しい街並みのカラー映像から開かれる物語は、一転して、1969年8月15日のモノクロの世界へとタイムワープする。 夕食時の路地で、元気溌剌な少年バディが家に帰…
1 「私は、マモちゃんになりたいって思う…それが無理なら、マモちゃんのお母さんでも、お姉ちゃんでもいい。何なら従兄妹でもいいよ」 「山田さん、もし、もしだよ。まだ会社にいて、今から帰るところだったりしたら、何か買って届けてくれないかな。俺今日…
1 「伊能忠敬は日本の地図を完成させてない。だから、大河ドラマにはならないんだよ」 伊能忠敬(いのうただたか)の死から開かれる物語。 千葉県香取市の市役所の総務課主任の池本は、市の観光振興策を決める会議で、「大河ドラマ」で郷土の偉人・忠敬(た…
1 「武士の世は滅びる…この継之助も滅びざるを得ない。滅びた後、日本の歴史にかってなかった新しい世の中がやってくる」 「我らの見込みは、政権の奉還より外にない。この判断に、神君家康公の御偉業を継承する唯一の道である。幕府を倒そうと事を謀る一部…
1 「…僕はね、君と話してる時間は、すごく落ち着いていられたんだ。君と話してると、僕は普通の街のパン屋さんになった気でいられたんだ」 筧井雅也(かけいまさや)の祖母が亡くなり、葬儀が執り行われる。 Fランクの大学に通う雅也は、親戚に「東京の大…
1 「一番売りたかったのは、私なのかも」「私たちの方が、ブローカーみたい」 弾丸の雨の中、一人の若い女が、教会のべイビーボックスの前に赤ん坊を置いて去って行く。 「捨てるなら産むなよ…あの女、任せた」 その様子を見ていたスジン刑事がイ刑事に呟き…
1 生きるためなら何でもするという生存戦略が渦巻いていた 「真理子、真理子!」と呼びかけながら、足を引き摺り歩き回る男の叫びから物語は開かれる。 下肢機能障害である男・道原良夫(以下、良夫)。 港町の造船所で働く良夫は、警官の友人・肇を呼んで…
1 「感情に訴える何かが起こると、雷に打たれたように体が動かなくなる。でも跳びはねれば、縛られた縄を振りほどくことができる」 「およそ10年前、10代だった東田直樹は、その著作で知らざれる世界を明らかにした。“自閉症の僕が跳びはねる理由”は、…
1 天を衝く少女の叫びが、闇のスポットを劈いていた スーパーで、20円足りずに万引きした父・原田智(さとし)を迎えに走って店に来た中学生の娘・楓(かえで)。 場所は、大阪市西成区あいりん地区。 「うちの父、ちょっと抜けてるとこあるんです」 楓が…
1 「お父さんは、お腹の中に悪いものができて、あっという間に死んじゃった。お母さんは彼氏と暮らしているよ…私、ずっとここにいていい?」 10歳の少女・家内更紗(以下、更紗=さらさ)が、公園のベンチで本を読んでいると、大粒の雨が降ってきた。 更…
1 「人間だから、罪を犯してしまう。私はそれを止めたい」 「村上さん!いるのは分かってるんですよ。会社から電話がありました。無断欠勤はルール違反です!」 保護司の阿川佳代(以下、佳代)が、保護観察対象者の村上美智子(窃盗罪 仮釈中)の家を訪ね…
1 「点滴のボタンをもう少し長く押せば、逝かせてあげられると。私にその勇気があれば、あんなに苦しませずに済んだ」 2011年1月31日、USジプサム社は業績悪化により、ネバタ州の石膏採掘所を閉鎖。企業城下町であるエンパイアも閉鎖され、7月に…
1 「前世、彼女はヤツメウナギだったの。川底の石に吸盤みたいなベロをくっつけて、ひたすら、ゆらゆらとする」 「彼女は時々、ヤマガの家に空き巣に入るようになるの」 「ヤマガ?」 「彼女の初恋の相手の名前。同じ高校の同級生。でも、ヤマガは彼女の想…
1 「世界を変えたくて、法律を学んだんでしょ。今こそカミングアウトして、世界を変えるチャンスよ」 カリフォルニア州 ウエスト・ハリウッド 1979年 ショーパブで歌うゲイのルディを見つめる一人の男。 地方検事局に勤務するポールである。 ルディもポ…
1 「家族抜きで、行動した事がないんです」 漁で生計を立てる4人家族のロッシ一家。 父フランク、母ジャッキー、そして兄レオの3人は、共に聴覚障害者。 高校生の娘ルビーが健聴者なので、「コーダ」である。 【コーダ(CODA)とは聴覚障害の家族を持…
1 「これからは僕がずっと一緒だから、安心してよ。木下恵介から、ただの木下正吉に戻るよ」 静岡県浜松市 米津(よねず)の浜 「昭和18年。太平洋戦争の最中、木下恵介は『花咲く港』で監督デビューした。浜松出身の木下は、この場所でもロケを行い、実…
1 「頑張ってたんだけど、結果としてさ、上演できなければ意味ないもの。だから、そこまでのもんだったんだって。しょうがない」 埼玉県立東入間高校の夏の高校全国野球大会の一回戦。 強豪校との対戦で、夢の甲子園球場に、バスで応援に駆り出された生徒た…
1 「大事なのは、腹割ることです。僕は、奥さん、助けたいんですよ」 下町の河川敷に建てられたみすぼらしい破(やぶ)れ屋。 人の気配はない。 そんな下町で印刷業を営む小林家には、主人の幹夫(みきお)と妻・夏希(なつき)、そして前妻の娘・エリコと…
1 「俺はお前の肺に巣食ってる結核菌に用があるんだ。そいつを一匹でも多く殺したいんだ」 眞田病院という小さな町医者に、ドアに手を挟まれて包帯を巻いた男・松永がやって来た。 釘が刺さったと言うが、眞田(さなだ)が取り出したのは銃弾だった。 「迷…
1 「生きとってくれて、ありがとな」 昭和三十三年 夏 大空建研という建築事務所に勤める平野皆実(みなみ/以下、皆実)。 復興が進む広島の街の一角にあるスラムで、母フジミと穏やかに暮らしている。 皆実には、疎開先の伯母の家に養子に入った弟の旭(…
1 「私には大切な人がいます。でも私の気持ちは絶対に、知られてはならないのです」 「未来の私からの手紙 二中三年四組 大場美奈子 あなたは、十五歳だった時の事を覚えていますか?もうずいぶん昔の事だけど、あなたは、こう思っていました。私は、この町…
1 「彼らは政府を恨んでる。何をするか分からない。全員逮捕して法廷で裁くべきです。扇動した者たちには厳罰を」 ソビエト連邦 ノボチェルカッスク 1962年6月1日 共産党市政委員会(生産担当)に所属するリューダは、上司のロギノフの家で朝を迎える…
1 「日本で一日でも長く安泰に暮らせるなら、我々がこの島を守る一日には、意味があるんです!」 硫黄島 2005 この日、調査隊が入り、地下壕に埋められた重大な資料を発見する。 硫黄島 1944 「花子、俺たちは掘っている。一日中、ひたすら掘り続け…
1 「止めて欲しいように見えた…あんなところで働かせるような奴に渡したくない」 娘が産まれたばかりの若い夫婦、たすく(・・・)とこ(・)と(・)ね(・)の会話。 「ちゃんとしようよ。このままじゃ、無理だと思う」 「何が?」 「なーんも、考えていないっしょ…