二十日鼠と人間('92) ゲイリー・シニーズ <「深い親愛感情」をベースにした、「対象依存的な友情関係」の見えない重さ>

 1  構築力が高く、人間の生きざまを真摯に見詰める映像



 本作は、構築力の高い秀逸な映像である。

 プロット展開には殆ど無駄がなく、説明的にもなっていない。

 アラバマ物語(1962年製作)で有名な、ホートン・フートの脚本もいい。

 彷徨する農業労働者を演じた、ゲイリー・シニーズジョン・マルコビッチの表現力も抜きん出ていた。

 何より、最後までリアリズムに徹していて、感傷に流されることがなく、殆ど予約されたかのような、衝撃のラストシーンに流れゆくエピソード挿入には、全て伏線的な意味を内包していて、そこに生まれる緊張感が、人間の生きざまを真摯に見詰める映像に、相当程度の完成度を保証した作品になっていた。

 以下、感銘深いスタインベック原作の物語を、数行でまとめてみる。

 1930年代、世界恐慌震源地であるアメリカのカリフォルニアが舞台。

大不況の農村地帯を渡り歩く、二人の労働者。

 聡明なジョージと、知的障害のレニーである。

 二人の夢は、いつの日か、自室を持ち、ウサギを多く飼える農場主になるというもの。

 しかし、二人を待ち受ける現実は厳しく、怪力・巨漢のレニーの不始末によって逃げ込んだ農場で、同様の事件を起こし、遂に悲惨な最期を迎えるのだ。

この感銘深い映像の評価は想像以上に高く、ジョージとレニーの濃密な友情と、その破綻の悲劇を抑制的に演出したゲイリー・シニーズ監督(画像)の手腕が冴えていて、一度観たら忘れられぬ一篇になったのだろう。


(人生論的映画評論/二十日鼠と人間('92)  ゲイリー・シニーズ <「深い親愛感情」をベースにした、「対象依存的な友情関係」の見えない重さ>)より抜粋http://zilge.blogspot.com/2010/11/92_19.html