1 男娼として夜の街に立って
テキサス生まれのカントリーボーイが、「夢の都・ニューヨーク」に旅立った。
男の名はジョー。
その目的は、男性的魅力に溢れていると信じる自分の肉体を売って、ひと稼ぎしようというもの。
その脳天気な若者のターゲットは、ニューヨークで無聊を託(かこ)つ小金を持った婦人たち。男は意気揚々と、カウボーイ・ハットを目深に被り、全身をカウボーイ・スタイルに身を包んで、ドリーム・シティにその長身の肉体を闊歩させていく。
男は先ず、中年婦人に声をかけた。
相手からの反応は、「自由の女神」への行き先の説明だった。
男の目的を知らされた婦人からの一言。
「恥を知りなさい」
男は夫人の後姿を、呆然と見送るだけ。
ようやく商売になったと思われた相手の女は、パトロン付きの娼婦。
ジョーはあろうことか、女に金を巻き上げられてしまう始末なのだ。
自分のイメージ通りにことが運ばないジョーの前に、一人の小男が出現した。
彼の仲間たちから、ラッツォ(ネズ公)と蔑まれているリコである。
男の名はジョー。
その目的は、男性的魅力に溢れていると信じる自分の肉体を売って、ひと稼ぎしようというもの。
その脳天気な若者のターゲットは、ニューヨークで無聊を託(かこ)つ小金を持った婦人たち。男は意気揚々と、カウボーイ・ハットを目深に被り、全身をカウボーイ・スタイルに身を包んで、ドリーム・シティにその長身の肉体を闊歩させていく。
男は先ず、中年婦人に声をかけた。
相手からの反応は、「自由の女神」への行き先の説明だった。
男の目的を知らされた婦人からの一言。
「恥を知りなさい」
男は夫人の後姿を、呆然と見送るだけ。
ようやく商売になったと思われた相手の女は、パトロン付きの娼婦。
ジョーはあろうことか、女に金を巻き上げられてしまう始末なのだ。
自分のイメージ通りにことが運ばないジョーの前に、一人の小男が出現した。
彼の仲間たちから、ラッツォ(ネズ公)と蔑まれているリコである。
下肢に障害を持つリコは、ジョーに、男娼で生きるには仲介者が必要であると説得し、言葉巧みに紹介料を巻き上げたのである。
騙されたことを知らない無邪気なカントリーボーイ、ジョーがホテルで引き合わされた男は、最初から様子が変だった。
「君も孤独だ」
「それほどでも・・・」
「孤独だ。孤独ゆえに酒を!孤独ゆえにヤクを!孤独ゆえに盗み、孤独ゆえに姦淫し・・・孤独を背負っているのだ」
こんなことを叫んだ後、「二人だけで跪(ひざまず)こう」などと訳の分らないことを言う始末。
ジョーは、ようやく自分が騙されたと感じて、ホテルの部屋を飛び出した。
途方に暮れたカントリーボーイの目的は、ただ一つ。
何としてでもリコを探して、金を取り戻すこと以外ではなかった。
ニューヨークの夜の街を走り続けるジョーの心に、焦燥感が生まれていた。
当然のことだが、肝心のリコが簡単に見つからないのである。
持ち金もなくなってきて、都会の孤独を嫌というほど感じていた。理想と現実の違いを思い知らされているのだ。
それでも彼はこの街で生きるために、男娼として夜の街に立った。しかし、そこに現われた若い男はゲイだった。
「金は払ってもらうぜ」とジョー。
「嘘なんだ。金はない」と相手の男。
「25ドル、ないのか?」
「どうする?」
「どうするだと?ふざけるな。ぶっとばされたいか!幾らある?」
ジョーは、相手の胸倉を掴んで恫喝した。
「全然」
「全部、ここに出せ」
手持ちの本を出す相手に、ジョーは彼の時計を奪おうとした。
「母さんが死ぬんだ、止めてくれ」
そんな言い逃れを真に受けたのか、ジョーはもう何もできなくなってしまった。
「いらねえよ」
その一言を苛立ちの感情含みの内に捨てて、ジョーは映画館のトイレを後にした。
騙されたことを知らない無邪気なカントリーボーイ、ジョーがホテルで引き合わされた男は、最初から様子が変だった。
「君も孤独だ」
「それほどでも・・・」
「孤独だ。孤独ゆえに酒を!孤独ゆえにヤクを!孤独ゆえに盗み、孤独ゆえに姦淫し・・・孤独を背負っているのだ」
こんなことを叫んだ後、「二人だけで跪(ひざまず)こう」などと訳の分らないことを言う始末。
ジョーは、ようやく自分が騙されたと感じて、ホテルの部屋を飛び出した。
途方に暮れたカントリーボーイの目的は、ただ一つ。
何としてでもリコを探して、金を取り戻すこと以外ではなかった。
ニューヨークの夜の街を走り続けるジョーの心に、焦燥感が生まれていた。
当然のことだが、肝心のリコが簡単に見つからないのである。
持ち金もなくなってきて、都会の孤独を嫌というほど感じていた。理想と現実の違いを思い知らされているのだ。
それでも彼はこの街で生きるために、男娼として夜の街に立った。しかし、そこに現われた若い男はゲイだった。
「金は払ってもらうぜ」とジョー。
「嘘なんだ。金はない」と相手の男。
「25ドル、ないのか?」
「どうする?」
「どうするだと?ふざけるな。ぶっとばされたいか!幾らある?」
ジョーは、相手の胸倉を掴んで恫喝した。
「全然」
「全部、ここに出せ」
手持ちの本を出す相手に、ジョーは彼の時計を奪おうとした。
「母さんが死ぬんだ、止めてくれ」
そんな言い逃れを真に受けたのか、ジョーはもう何もできなくなってしまった。
「いらねえよ」
その一言を苛立ちの感情含みの内に捨てて、ジョーは映画館のトイレを後にした。
(人生論的映画評論/真夜中のカーボーイ('69) ジョン・シュレシンジャー <舞い降りて、繋がって、看取った天使、そして看取られた孤独者>)より抜粋http://zilge.blogspot.jp/2008/11/69.html