「隣人が殺人者に変わる」 ―― ルワンダで起こったこと

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1  「男女平等」の社会を具現した「アフリカのシンガポール


女性が政界に進出し、障害者への配慮も広がり、弱者に優しい社会になった。

とりわけ、議員の一定数を女性に割り当てる「クオータ制」の導入によって、議席の3割以上を女性とする制度を定めた結果、2019年9月の時点で、女性の国会議員比率が61%になり、女性の国会議員比率が世界で最も高い国となった。

まさしく、「男女平等」の社会を具現したのだ。

多くの人がスマホを持ち歩き、美しい指先でスマホを操作する。

タクシーに乗ると、運転手から携帯番号を求められ、走行距離や料金のレシートはスマホに届く。
女性たちは着飾り、とても華やかである。

大学・大学院を出たキャリアウーマンも健在で、経営者として成功している女性も少なくない。

このような改革を実践したのは、反体制派への弾圧を行う独裁的指導力によって、2000年に大統領に就任したポール・カガメ。

現職である。

本稿のタイトルで判然とするように、「男女平等」の社会を具現したというこの国の名は、カガメ大統領の長期政権の中で改革が進むルワンダ

―― 以上が、未だに「大虐殺」のイメージが強いルワンダの「今」の、社会的風景の一端である。

「確かに、都市部と農村部とでは格差があります。教育を受けた人、受けなかった人の間にも格差があります。でも、田舎に行けば男性も女性も等しく貧困だし、首都キガリでは男性も女性も働いている。そういう意味で、確かにルワンダジェンダーギャップのない国ではあるのです」

些(いささ)か皮肉含みで語るのは、ルワンダ在住のキャリアウーマン。

「男女平等」の社会を具現した「アフリカのシンガポール」。

「改革」のキャッチコピーとしては面映(おもは)ゆいかも知れないが、その方向性・指針として評価すれば、「改革」の内実は、「アフリカの奇跡」と紹介したWikipediaでも確認できる。

思うに、憲法改正によって2034年まで大統領職に在職可能な、ツチ系のポール・カガメ大統領の大胆な改革の中で重要なのは、出身部族を示す身分証明書の廃止である。

なぜなら、これによって、アフリカ中央部のブルンジルワンダに居住し、ルワンダ語を使用する3つの部族、即ち、「フツ」・「ツチ」・「トゥワ」(狩猟採集民)ではなく「ルワンダ人」としてのアイデンティティを掲げ、国民の融和を目指し、実践したこと。

独裁的政治手法だが、国内の年齢・性別・宗教・民族の多様性を掲げ、アフリカ初の選挙によって選出された女性大統領、ジョンソン・サーリーフによる民族融和政策と同様に、この政策の具現化は大きかった。

かくてカガメ大統領は、国民の信頼は厚く、2017年の選挙では98.8%の得票率で勝利している。

―― 以上は、「Yahoo!ニュース特集」に掲載された、「ルワンダ『女性活躍』の複雑な実情――“虐殺”から25年、様変わりした国の現実」(執筆者・ニシブマリエ)というタイトルの記事の要旨を、自らの見解を含めてまとめたもの。

これがルワンダの実情だが、しかし、私たちが知っている「ルワンダ大殺戮の悲劇」というイメージとの乖離を痛感させられ、言葉を失うほどである。

 時代の風景: 「隣人が殺人者に変わる」 ―― ルワンダで起こったこと より