2025-01-01から1年間の記事一覧
「スケアクロウ」 ―― 紛う方なく、完璧な映画だった。 この作品こそ、ニューシネマの最高到達点を示す記念碑的映画であると私は考えている。 ニューシネマの不必要なまでの濫作の中にあって、この映画だけが、“逸脱し、無軌道に走った者たちのその後の人生”…
1 「なぜ隠した」「俺が怖がってるとでも?」「怖がらせるなら、幾らでも方法はあるさ。ナイフを返せ」 裕福なアンジェイとその妻・クリスティーナは、日曜日にヨットで船出しようと、湖畔の桟橋へ自動車を走らせていた。 そこへ、ヒッチハイクの若者が前方…
1 「ワレ狂カ愚カ知ラズ、一路ツイニ奔騰スルノミ。」 昭和8年、満州への武力進出が問題となり日本は国際連盟を脱退し、国際的に孤立し、国内でも経済不況と農村恐慌が重なって国民の不満と怒りは頂点に達していた。 陸軍の若手将校たちが昭和維新の断行に…
1 「おい!みんな死んだぞ!お前が撃たなかったからだ!」 1945年 大戦末期の大戸島(おおどしま/架空)飛行場 敷島浩一(以下、敷島)は特攻へ向かう途中で、砲撃でデコボコになった大戸島の守備隊基地の滑走路に零戦を着陸させた。 整備兵の橘(たち…
1 「広大な庭ね。言葉がないわ」「すべて私の設計よ。植栽や何もかも。温室や奥にあるあずまや(東屋)も」 第二次大戦下のポーランド南部・オシフェンテム(ドイツ語名アウシュヴィッツ)郊外。 ルドルフ・ヘスはアウシュヴィッツ収容所の所長として、収容…
【手塚治虫をはじめとした日本を代表する漫画家たちが若き日々を過ごし、東京都豊島区に実在した伝説的アパート「トキワ荘」の日常を、昭和30年代の懐かしい空気感をそのままに描いた青春ドラマ。豊島区の木造アパート・トキワ荘に住む「漫画の神様」手塚…
1 「私のこと、お母さんって呼べる?」「うん」「呼んでみて」「お母さん」「拓未…お帰り」 父・里谷孝蔵の介護認定のために、長野の山奥の故郷に7年ぶりに帰って来た娘の千紗子(ちさこ)。 千紗子の顔をまじまじと見て、「誰?」と孝蔵。 「何その言い方…
1 トニー滝谷は、今度こそ、本当に独りぼっちになった 〈トニー滝谷の本当の名前は、トニー滝谷だった…トニーの父親は、滝谷省三郎というジャズミュージシャンだった。太平洋戦争の少し始まる前に、省三郎はちょっとした面倒を起こして、東京から中国に渡っ…
1 「どうしても死ぬというのなら、この私を殺してから、腹を召されてください!」 藩を離れ、浪人の身の柳田格之進は、娘・お絹と共に、江戸の貧乏長屋で慎(つつ)ましくに暮らしている。 溜めた店賃(たなちん)を請求に来た大家に、夕刻までには用意する…