2021-01-01から1ヶ月間の記事一覧

夜明けの祈り('16)   アンヌ・フォンテーヌ

<「暗闇で叫んでも、誰も応えない」冥闇の世界 ―― それが十字架だった> 1 「この恐ろしい出来事と、信仰の折り合いがつきません」 修道院から戒律を破って逃げ出した一人の修道女。 フランス赤十字の病院に駆け込み、助産の助けを求めるが、ポーランド人…

獣は月夜に夢を見る('14)   ヨナス・アレクサンダー・アーンビー

<「村社会」の破壊的暴力に抗し、自らの「獣性」によって弾き返す少女の成長譚> 1 獣人化した少女が拉致した者たちを噛み殺していく 北欧のとある漁村に住み、魚の加工工場で働く少女マリーは、そこに勤める仲間たちから魚の廃棄物の水槽に落とされるとい…

きっと、いい日が待っている('16)   イェスパ・W・ネルスン

<決定的に成就する、「月面着陸」という復讐劇> 1 「幽霊になること」を強いられた少年たち 1967年 コペンハーゲン。 望遠鏡や雑誌を万引きし、店員に追いかけられ、2人の兄弟が逃走する。 エリックとエルマーである。 まもなく、“児童保護サービス”…

シングルマン('09)    トム・フォード

<「悲嘆」の日々を自己完結する男が得た、凝縮した時間の輝き> 1 「この1日を生き抜け」 ―― 「悲嘆」の日々に放つ言葉の収束点 1962年11月30日・金曜日。 その日、ジョージは16年連れ添ったゲイのパートナー・ジムを交通事故で喪った悪夢で目…

 「自分自身を信じる力」が強い男の強烈なメッセージが、風景を変えていく 映画「ノクターナル・アニマルズ」の凄み('16)   トム・フォード

1 強い衝撃を与えた小説の残像が張り付き、過去の日々が侵入的に想起していく ロサンゼルス(以下、LA)。 全裸の肥満女性たちが卑猥な相貌性を展示するオープニングシーンが、観る者の中枢を抉(えぐ)っていく。 このおぞましい展示をプロデュースした…