2024-01-01から1ヶ月間の記事一覧

ドラマ特例 今朝の秋('87)    善意の集合がラインを成した物語の、迸る情緒の束

1 「おめえにゃあ、ひと月は何でもにゃあかも知れんが、年寄りは明日をも知れん!」 1970年代。 隆吉は息子の理一の転勤に伴い、名古屋から富山に引っ越すことになった。 隆吉の妻・もと(以下、便宜的に「モト」にする)は入院中のため名古屋に残り、…

夜明けまでバス停で('22)   「道徳的正しさ」で闘った女の一気の変容

1 「やめて下さい。仕方ないんです。こういうことは誰のせいでもないので」 アクセサリー作家の北林三知子(以下、三知子)は、昼は喫茶店の一角で自作作品を販売し、教室を開いたりしながら、夜は居酒屋でバイトをしている。 若い女性店長の寺島千春(以下…

she said/シー・セッド その名を暴け('22)  使命感という闘いの心理学

1 「イジメ、精神的虐待。理解するには若すぎた。彼は皆を服従させたがる」「拒むと?」「唸り声をあげ、ツバを吐き、数秒で人を破滅させる」 アイルランド 1992年 映画の撮影スタッフの若い女性が、啜(すす)り泣きしながら通りを走って行く。 ニュー…

LOVE LIFE('22)   幻想崩壊から踏み出す一歩

1 「〈あなたに協力してほしいことがある。あなたにしか頼めない〉」 深田ワールド全開の秀作。 だから、全編にわたって心理学の世界が広がり、いつものように手強い作品になっていた。 ―― 以下、梗概。 団地に住む大沢二郎は、妻・妙子、そして妙子の連れ…