2015-12-01から1ヶ月間の記事一覧

狩人の夜(‘55)   チャールズ・ロートン <サイコパスと「性嫌悪障害」を人格の芯と化す男の「妖怪性」>

1 「香水の匂い。ひらひらしたレース。巻き毛」を憎む神の名の下で 「偽預言者に気をつけよ。羊の衣を着て近づくが、内側はオオカミである。その果実で彼らを見分けよ。良い木に悪い実はならず、悪い木に良い実はならない。実によって、彼らを見分けるのだ…

遠い空の向こうに(‘99)  ジョー・ジョンストン  <「夢を具現する能力」に昇華させた「夢を見る能力」の凄み>

1 「炭鉱は僕の人生じゃない。僕は宇宙へ飛びたい」 素直に感動できる。 物語の主人公が、自分の遠大な夢を具現するには、本人の人一倍の努力だけでなく、それを共有する仲間との友情、周囲の理解ある大人の存在が如何に重要であるかということを、あざとさ…

マレーナ(‘00)  ジュゼッペ・トルナトーレ <戦略的映像の理念系映画の鮮やかな着地点>

1 「心に残るのは、あの少年の日に愛した女(ひと)だけ。マレーナ・・・」 「ファシスト党のムッソリーニ首相の演説があるから、カステルクルトの町民はラジオ放送を聞け!」 軍の宣伝カーから開かれる物語は、少年時代を回想する主人公・レナートのナレーシ…

声をかくす人(‘11)   ロバート・レッドフォード <「国の混乱を防ぐために真実を捨てることができる者」と、「人間の尊厳を守るために真実を捨てることができない者」との闘いの物語>

1 「戦時に法は沈黙する」―― その政治力学と闘う弁護士の絶望的な風景 ロバート・レッドフォード監督の真骨頂とも言える傑作。 「普通の人々」(1980年製作)、「クイズ・ショウ」(1994年製作)と並んで、私の最も好きな映画である。 いつものよう…

バンクーバーの朝日(‘14)  石井裕也 <世代の意識のギャップを昇華させる「朝日軍」の若者たち ―― その結合エネルギーの結晶点>

1 「ひょっとして、俺たちさ。何か凄いことやってんじゃねぇか」 心の芯にまで染み込んでくるような秀作である。 石井裕也監督は、今、何を作っても水準を超えるクオリティが高い映像を構築するのではないか。 ここでも、妻夫木聡は素晴らしかった。 テーマ…