2023-11-01から1ヶ月間の記事一覧

小林多喜二('74)   闇があるから光がある

1 「闇があるから光がある。闇から出てきた人こそ、一番本当の光のありがたさが分かるんだ。世の中は幸福ばかりで満ちているもんではないんだ」 一九三三年(昭和八年)二月二十日 東京・赤坂・福吉町 日本共産青年同盟の詩人・今村恒夫と共に、赤坂の連絡…

銀河鉄道の父('23)   魂の呻きを捩じ伏せて、なお捩じ伏せて、這い出して、熱量を噴き上げていく

1 「宮沢賢治はその程度の文士なのか?その程度で諦めんのか?トシがいねえのなら、私が全部、聞いてやる!私が宮沢賢治の一番の読者になるじゃ!」 明治29年9月 岩手県花巻で質屋を営む宮沢政次郎(まさじろう)は、妻・イチが長男を出産したという電報…

橋のない川 第二部('70)   闘い切った映画作家の本領の眩さ

スケッチブックを抱えて、川の対岸を歩いている杉本まちえ(以下、まちえ)の姿を見て、畑中孝二(以下、孝二)は、「まちえさ~ん!」と何度も呼びかけるが気づいてもらえない。 夢だった。 高等科を優等で卒業した孝二は18歳となり、ガラス工場で熱心に…

ザ・ホエール('22)  時間の傷を溶かす距離の重さ

1 「うっ血性心不全よ。ここままでは週末までに死ぬ。死んでしまう」「僕は最悪な人間だ。分かってる。すまない」 オークリー大学の遠隔始動プログラムのオンライン講師をしているチャーリーは、学生たちに向けた講義をしているが、アップされた生徒たちの…