2020-11-01から1ヶ月間の記事一覧

以下、人生論的映画評論・続 禁じられた歌声('14)  アブデラマン・シサコ

<宗教イデオロギーで「禁止・裁き」を断行する「狂気」の猛威> 1 「娘は俺のすべてだ。この世で最も大切な宝だ。娘は保護者を失う。それが一番の気がかりだ」 ニジェール川の中流域にあるティンブクトゥ(「トンブクトゥ」とも言う)。 マリ共和国(西ア…

自転車泥棒 ('48)  ヴィットリオ・デ・シーカ

<父とぴったり、ラインを同じにして> 1 家族とは「パンと心の共同体」である こんな時代があって、こんな人々がいた。 こんな風景があって、こんな家族がいた。 そして、そこに様々な人々の多様な繋がりがあって、良きにつけ悪しきにつけ、そこに一定の結…

ガーンジー島の読書会の秘密('18)  マイク・ニューウェル

<「悲嘆」を共有する女性作家の変容と覚醒の物語> 1 「読書会」という名の心の繋がりを作った女の軌跡を求めて 1941年 イギリス海峡 ガーンジー島 第二次大戦中、ドイツ軍による占領下。 冒頭のキャプションである。 外出禁止令の中、いきなりドイツ…

残像('16)   アンジェイ・ワイダ

<何ものにも妥協できない男の〈生〉の軌跡の、それ以外にない「約束された着地点」> 1 極限状態にまで追い込められて路上死する前衛芸術家 「ものを見ると目に像が映る。見るのをやめて視線をそらすと、今度は、それが残像として目の中に残る。残像は形こ…