2017-09-01から1ヶ月間の記事一覧

日本国憲法の「平和主義」 ―― その「ダブルバインド状況」の居心地の悪さ

1 「ダブルバインド状況」の破壊力 アメリカの文化人類学者・グレゴリー・ベイトソンは、戦後まもなく、精神病棟でのフィールドワークで、患者さんの心身に惹起するプロセスの変化に注目し、その貴重な経験から「ダブルバインド理論」という、今では普通に…

映画「ブラス!」に見る怨嗟と甘えの構造

1 音楽文化の「進歩」の一つの結晶点としての「英国式ブラスバンド」 ここまで「サッチャリズム」への怨嗟を声高に叫ぶ映画を見せられると、その露骨なプロパガンダの政治的主張に辟易するが、失業に追いやられる炭鉱労働者の憤怒の情動を理解できなくもな…

映像化された「語りもの」の逸品が、奇跡的な「復讐・再会譚」として炸裂する

1 「盗賊の群れが津波のように荒し回らぬ夜はない」 網野善彦(中世日本史を専攻する歴史学者)が提唱した「荘園公領制」という重要な概念がある。 貴族や寺社、豪族などの私有地である荘園の広がりによって、律令国家の理想である「公地公民制」(全ての土…

「無償の愛」という幻想の本質は「ギブ&テイク」である

1 「無償の愛」という幻想の本質は「ギブ&テイク」である 「無償の愛」 ―― 相当に手垢がついた言葉だが、安楽死していない現実も頷(うなず)ける。 それを素朴に信じる人・信じたいと思う人が、世代を超えて繋がっているからである。 多くの宗教家は無論…

犯罪被害者のグリーフワーク ―― その茨の道の壮絶な風景

1 「犯罪被害者は泣き寝入りしてはならない」 「犯罪被害者等基本法」という法律がある。 「犯罪被害者等の多くは、これまでその権利が尊重されてきたとは言い難いばかりか、十分な支援を受けられず、社会において孤立することを余儀なくされてきた。さらに…

「蟻の一穴」から堤も崩れる

ムハンマド(マホメット)の血統重視のシーア派に対し、ムハンマドの教えを重視するスンニ派(スンナ派)のイスラム原理主義・ワッハーブ派を国教としているサウジアラビア。 言ってみれば、「コーラン至上主義」に拠って立っているが故に、サウド家の支配に…