2013-06-01から1ヶ月間の記事一覧
1 人間の「不完全性」を一つの家族に特化し、見事に構築した映像完成度の高さ 「デタラメ」な振舞いを最も厭悪する者が陥りやすい、「正義の罠」の反転によって、「立ち竦み」に振れる人間の「不完全性」を、舞台劇仕立てのミニサイズで一つの家族に特化し…
1 完全拒絶によって開かれた「事件」の闇 本作は、ある「事件」を契機に、雁字搦めに縛りあげていた「圧力的な日常規範」から、自我を一気に解放していく心的過程を辿っていく者と、自在に解放された世界で自己運動を繋いでいた自我が、その解放への起動点…
1 男の脱出願望と、感謝の被浴による快楽との危うい均衡 必ずしも、本作の主人公である「『善人性』を身体化するニセ医者」のバックボーンが明瞭に表現されていないが、私なりにイメージする、件の「ニセ医者」の心理の振れ具合に焦点を当てて書いてみよう…
1 ファンタジーに流れゆく剥ぎ取られたリアリズム 当然、こういう映画があっていい。 だが、現代の日本が抱える教育に関わる、重大な「問題提起作」という印象から乖離していて、私には大いに不満が残った。 このような映画を世に問うに足る覚悟が、作品か…
1 象徴的イメージを負った記号 ここに、6人の日本人がいる。 1人、2人目は梶川夫婦。拡張型心筋症の息子(8歳)を持ち、近々、タイで心臓移植を計画している夫妻である。① 3人目は、買春目的でタイに行き、非合法でペドフィリア(小児性愛)を愉悦し、…
1 「構成力」と「主題性」、「娯楽性」、「サスペンス性」がクリアされた一級のサイコ・サスペンス 「The Silence Of Lambs」 これが、本作の原題である。 和訳すると、「羊たちの沈黙」。 この謎に満ちた原題を持つ鮮烈なサイコ・サスペンスは、立場が異な…
1 「葛藤・内省描写」の不足によって失った生身の質感を有する人格像の厚み 映像総体には特段に破綻がなく、客観的には佳作と評価できるかも知れないが、私としては不満の残る作品となった。 何かが足りないのである。 その何かの不足のために、物語の訴求…
1 二人の少年の死に集約される物語 「ニュー ヨーク、パリ、ロンドンのような近代都市は、その富と極貧を裏に隠している。子どもたちは飢えて、学校からも見放され、非行に走りがちになる。改善しようと社会は努めるが、報われるのは限定的である。未来は現…
1 韓国人が持っている根源的な矛盾 「ストーリーには、統合失調症がより激しくなった韓国の状況が具体的に打ち出されています。どう受け止めるかは、観客にゆだねています」(「KOFIC 、Cine21出版:韓国映画監督シリーズ ポン・ジュノ監督イン…
1 「人間性の素晴らしさ」、「野球界でもう一度頑張れよ」という表現の曖昧さ NHK・2013年5月7日(火)放送の「クローズアップ現代」を観て、些か当惑した。 「松井秀喜とともに闘った“同級生”たち」 これが、その日の「クローズアップ現代」のテ…
1 物語の序盤から炸裂するシリアルキラーの不気味さ 本作の凄いところは、一貫して、犯人のヨンミンの犯罪動機に触れるに足るような、身分・地位・学歴などの履歴や政治社会的背景に、犯罪のルーツを安直に還元させないところにある。 いつの時代でも、どの…
1 ヒロインの成長物語のうちに昇華させていく「戦略的映像」 欲望の稜線を伸ばした結果、最悪の事態を招来しても、それを無化することなく、自分の〈生〉に繋いでいくとき、その状況下で選択し得るベターな判断を導き出し、それを身体化する。 その身体化の…
序 「この世の終わりに生きている者」が、「この世の終わりに生きていない者」に提示した挑発的映像の凄み 抜きん出た構成力と毒気溢れる主題提起力によって、一級のアートにまで昇華したラース・フォン・トリアー監督の力量を存分に検証した傑作。 「この世…
1 「旅は、人を変容させる」というロードムービーの基本命題 「旅は、人を変容させる」 全てとは言わないが、この「変容」という概念に収斂される極め付けの幻想が、ロードムービーの基本命題である。 従って、ロードムービーを成功させるのは、「変容し得…
1 「困難な状況下の、苛酷な努力による『仲間の再生』」という文脈の暑苦しい臭気を蹴飛ばして 観る者に、冒頭から見せるのは、校内の廊下の長回しのシーンによる、学園祭の準備風景。 既に、この作品が、「学校生活」という退屈極まる〈日常性〉の中の、「…