1 自警団という絶対的加害者の悍ましさ 「橋を渡って一町ほど行くと 朝鮮人が日本人に鉄砲で撃たれた 首を切られたのも見た」 「クローズアップ現代」(「集団の“狂気”なぜ ~関東大震災100年“虐殺”の教訓~」より)で紹介された東京・本所区横川尋常小…
作り手の覚悟・胆力が映し出す、全編ワンカットの圧巻の90分間。 以下、梗概。 1 「毎日妻に軽蔑されたい?…男なら勇気を出して礼儀を教えてやるの」 幼稚園教師のエミリーは、トイレに入って妊娠テストをする。 「お願い。今度こそ…」 しかし、またも不…
1 「2人で行きたい。本物の家族みたいに」 ロイヤル・ホバート病院、熱傷センターで入院する子供たちにテレビのレポーターがインタビューをする。 「君はどうして火傷を?」 「ええと、寝室に上がっていく時に、ライターで火をつけてみたくなったんだ。打…
1 「妙な連中ばかりさ。俺以外の黒人もだ」 夜道に迷った黒人男性が、ゆっくりと歩調に合わせて走る不審な車に気づき、最初は知らん顔して歩き続けようとしたが、「襲われたら最後だ。逃げるぞ」と呟き、来た道を戻るが、何者かに襲われ車で連れ去られた。 …
1 「自分を何だと思ってる。お前は悪魔か」「そう。あんたに禍を」 1942年 ジャワ 白人と東洋人の男が後ろ手に縛られて、地面に横たわっている。 「前代未聞の不祥事が起こった。所長大尉殿に報告せず、ハラの一存で処断する」 ハラ軍曹(以下、ハラ)…
台詞を正確に起こしてみて納得尽くのワンシチュエーション映画の秀作。 伏線の全てが回収され、驚かされた。 以下、かなり長くなるが、5人の男たちの艱難(かんなん)なジグソーパズルの醍醐味をシリアス含みで描き切った本篇の要旨をまとめた投稿文です。 …
1 「母さん、見てごらん。海に来たよ」 「♪きっと いつの日にか お前も分かるだろう ならず者たちに向かって 泣きながら言ったこと ひざまずいて 命乞いをしたことを あの夜 私は叫んだ 山はこだまを返し 男たちは笑った 痛みと闘いながら やつらに言い返し…
一葉文学の結晶点。 映画史上に残る今井正の最高傑作。 以下、代表作3篇が揃ったオムニバス映画の梗概。 1 第一話 十三夜 沈鬱な表情で、嫁ぎ先の原田の家からせきが実家を訪れた。 久しぶりの訪問を歓迎する父・主計と母・もよ。 二人とも、嫁ぎ先の原田…
他国の領土を武力で奪って国境線を変えようとする。 これだけは許されないという国際社会の根本的なルールを破ったロシアによるウクライナ侵略。 確かに、ルールなしの侵略行為は過去には横行していた。 欧州では、仏独などで戦争の度に国境線が目紛(めまぐ…
1 「もしかしたら、あたしたちの考えてることって、同じなんじゃないかしら」 駆け出し女優の森崎小夜子(以下、小夜子)は、同棲中の漫画家志望でエキストラの仕事をしている三浦晋作(以下、晋作)に妊娠を告げるが、晋作は出産に反対する。 晋作が自宅ア…
1 「わがかばね(屍)は野外にすてられて、やせ犬のゑじき(餌食)に成らんを期す」 幼少期から才媛の誉 (ほま) れが高く、猛烈な読書家でもあった。 その知的欲求の高さが探求心に繋がり、物事に対する集中力を鍛え上げていく。 主体性も育てていくので…
1 「おめえにゃあ、ひと月は何でもにゃあかも知れんが、年寄りは明日をも知れん!」 1970年代。 隆吉は息子の理一の転勤に伴い、名古屋から富山に引っ越すことになった。 隆吉の妻・もと(以下、便宜的に「モト」にする)は入院中のため名古屋に残り、…
序章 江戸のうんこはいずこへ 安政五年・江戸・晩夏 寺の厠(かわや・便所)から糞尿を肥桶(こえたご)に汲み取る汚穢屋(おわいや)の矢亮(やすけ)は、相方(あいかた)が腹を下して来れなくなり、「半分しか持っていけない」と言って、寺の坊主に半分の…
1 「おめえにゃあ、ひと月は何でもにゃあかも知れんが、年寄りは明日をも知れん!」 1970年代。 隆吉は息子の理一の転勤に伴い、名古屋から富山に引っ越すことになった。 隆吉の妻・もと(以下、便宜的に「モト」にする)は入院中のため名古屋に残り、…
1 「やめて下さい。仕方ないんです。こういうことは誰のせいでもないので」 アクセサリー作家の北林三知子(以下、三知子)は、昼は喫茶店の一角で自作作品を販売し、教室を開いたりしながら、夜は居酒屋でバイトをしている。 若い女性店長の寺島千春(以下…
1 「イジメ、精神的虐待。理解するには若すぎた。彼は皆を服従させたがる」「拒むと?」「唸り声をあげ、ツバを吐き、数秒で人を破滅させる」 アイルランド 1992年 映画の撮影スタッフの若い女性が、啜(すす)り泣きしながら通りを走って行く。 ニュー…
1 「〈あなたに協力してほしいことがある。あなたにしか頼めない〉」 深田ワールド全開の秀作。 だから、全編にわたって心理学の世界が広がり、いつものように手強い作品になっていた。 ―― 以下、梗概。 団地に住む大沢二郎は、妻・妙子、そして妙子の連れ…
1 「私たち9人が知恵を出し合い、真剣に議論を行えば、きっとみんなが納得できる結論に至るはずです」 平成21年(2009年) 裁判員の参加する刑事裁判が始まった。 被告人・中原敦志(以下、中原)の婚約者・川辺真由美(以下、川辺)の証言。 「私は…
1 「二人でやれるところまで、やってみよう。お母さんのために」 女性雑誌の編集者である斉藤浩輔(以下、浩輔)は、仕事の後のゲイ仲間との夕餉(ゆうげ)を愉悦している。 その浩輔の帰郷の際のモノローグ。 「憎むほど嫌いだった故郷の田舎から逃げるよ…
1 「何であんなことしたって聞きたいんだろうけど、人の誠意をあまり疑うなよな。律儀過ぎるんだよ、お前」 キャバレーのボーイをしている作家志望の野崎辰雄(以下、辰雄)は、父・文雄の急死の電報を受け、6年ぶりに信州・飯田に帰郷することになった。 …
1 「昨日の夜、大変なことが起きたんだ。男たちが銃を持って…ピクニックや散歩に来てた人たちを撃った。大勢が撃たれた…」 パリで短期滞在のアパートの雑用をしているダヴィッドは、案内するインド人観光客の到着が遅れたことで、姉・サンドリーヌの7歳の…
1 「この時、気づきました。この社会には穴が開いているって。一度でも落ちてしまったら、この穴から簡単には抜け出せない」 「人にしてもらいたいと思うことは何でも、あなたがたも人にしなさい マタイによる福音書7章12節」 「黄金律」とも言われるイ…
1 「闇があるから光がある。闇から出てきた人こそ、一番本当の光のありがたさが分かるんだ。世の中は幸福ばかりで満ちているもんではないんだ」 一九三三年(昭和八年)二月二十日 東京・赤坂・福吉町 日本共産青年同盟の詩人・今村恒夫と共に、赤坂の連絡…
1 「宮沢賢治はその程度の文士なのか?その程度で諦めんのか?トシがいねえのなら、私が全部、聞いてやる!私が宮沢賢治の一番の読者になるじゃ!」 明治29年9月 岩手県花巻で質屋を営む宮沢政次郎(まさじろう)は、妻・イチが長男を出産したという電報…
スケッチブックを抱えて、川の対岸を歩いている杉本まちえ(以下、まちえ)の姿を見て、畑中孝二(以下、孝二)は、「まちえさ~ん!」と何度も呼びかけるが気づいてもらえない。 夢だった。 高等科を優等で卒業した孝二は18歳となり、ガラス工場で熱心に…
1 「うっ血性心不全よ。ここままでは週末までに死ぬ。死んでしまう」「僕は最悪な人間だ。分かってる。すまない」 オークリー大学の遠隔始動プログラムのオンライン講師をしているチャーリーは、学生たちに向けた講義をしているが、アップされた生徒たちの…
1 「世間の人は、わいらをエッタ、エッタ言うて、ケダモノみたいに言いまんのや。なんぼ自分で直そう思うても、エッタは直せまへん。校長先生、どげんしたらエッタが直るんか、教えてくんなはれ」 「日露戦争に勝利した日本陸軍は、その余勢を誇るかのよう…
1 「ケイコは目がいいんですよ。じーっと見てる。多少時間はかかりますけどね。それは、苦労なんかじゃないですね」 2020年12月 東京 「小河恵子 東京都荒川区生まれ。生まれつきの感音性難聴で、両耳とも聴こえていない。2019年プロボクサーライ…
1 「稼げるようになったら、きっちり返すから。この話は終わり」 “カリフォルニア州の快楽主義を語る人は、サクラメントのクリスマスを知らない” J・ディディオン(冒頭のキャプション) 「何かを達成したい」 大学見学からの帰路、母・マリオンが運転する…
1 「わかった。こうしよう。試合さえ見せてくれたら、奴隷のように働く。お袋さんや家畜の世話もするし、放牧にも連れてく…」 「イランでは、女性が男性の競技を観戦できない。本作は2005年のワールドカップ最終予選、イラン対バーレーン戦の最中に撮影…