2023-09-01から1ヶ月間の記事一覧

生きる('52)   黒澤ヒューマニズムの真骨頂

1 「わしは死ぬまでその、一日でも良い、そんなふうに生きて…死にたい」 「これは、この物語の主人公の胃袋である。噴門部に胃癌の兆候が見られるが、本人は未だそれを知らない」(ナレーション) その主人公とは、某市役所の市民課長を務める渡辺勘治(以…

わが青春に悔いなし('46)  顧みて悔いのない生活

1 「あなた、秘密があるのね。それを私にください。それが欲しいんです。私、それがとても良いものに違いないと思うから」 「満州事変をキッカケとして、軍閥・財閥・官僚は帝国主義的侵略の野望を強行するために、国内の思想統一を目論見、彼等の侵略主義…

潜水服は蝶の夢を見る('07)   「想像力」と「記憶」を駆使し、窮屈な“潜水服”の状態から抜け出ていく

1 「体が動かない。動けぬまま、僕は旅の手記を書く。孤独の彼方に、漂流する者の目で」 脳梗塞によって、ロックトイン症候群(閉じ込め症候群)になり、眼球運動以外のコミュケーション機能を失った一人の男・ジャン=ドーが、事故から3週間後に覚醒した…

ラーゲリより愛を込めて('22)   「堂々たる凡人」 ―― その生きざま

1 「“死んだ者を哀しんで、なにが悪い!人間としての権利だ!”」 1945年 満州 ハルビン 妹の結婚式で、美味しそうに料理を食べる山本幡男(はたお/以下、幡男)と妻モジミと4人の子供たち。 「素晴らしい結婚式だ」と幡男。 「ええ」とモジミ。 その…