2017-03-01から1ヶ月間の記事一覧

「失敗のリピーター」を止められない日本軍の度し難き生態

1 「戦争というのは勝ち目があるからやる、ないから止めるというものではない」 よく言われるように 、日本軍の失敗の原因を追究する歴史研究の中で、真っ先に挙げられるのは、1939年(昭和14年)5月から9月にかけて出来したノモンハン事件(モンゴ…

キャロル(’15) トッド・ヘインズ <「家族主義の時代」の「差別前線」の包囲網を突き抜け、抑圧からの女性の解放を描いた傑作>

1 抑圧の縛りを穿ち、新しい人生に踏み込んでいく二人の女の葛藤と再構築の物語 消費文明が一つのピークを迎えて、健全な「家族主義」を謳歌する「フィフティーズ」(50年代)の時代の渦中にあって、二人は運命的な出会いをする。 キャロルとテレーズであ…

「ナチズム」という妖怪の風景の悍ましさ ―― 或いは、「思考停止」というラベリングの浮薄さ

1 「アーリア人の勝利か、しからずんば、その絶滅とユダヤ人の勝利か」 1919年、フランスのベルサイユ宮殿で調印された、第一次大戦の講和条約によって、ドイツは領土の割譲と多額の賠償金の支払いを義務付けられて、その不満からナチスの台頭を招来し…

あん(’15) 河瀬直美<抑制力を欠き、「全身自然派系」にシフトしていく物語が失ったもの>

1 子を産めなかった女と、母を喪った男との「疑似母子」の物語 前半は、文句なく素晴らしい。 自分の顔を傍に近づけながら、小豆(あずき)と対話する76歳の徳江。 手の甲に皮膚疾患(結節)の目立つ徳江の穏やかな表情が、50年間、「あん」作りに魂を…