2021-12-01から1ヶ月間の記事一覧

幸せなひとりぼっち(‘15)     ハンネス・ホルム

<グリーフは吐き出すことで癒される> 1 「死ぬのも簡単じゃない。居候まで増えた。こいつを何とかしたら、必ず、そっちへ行く」 「昨日、そっちへ行けなくて、すまなかった。周りが騒がしくてね。新入りが越してきたんだ。近頃の奴らには驚かされる。車で…

人生論的映画評論・続 MOTHER マザー('20)   大森立嗣

<「見捨てられ不安」を膨張させてきた感情の束が累加され、強迫観念と化していく> 1 「ばあちゃんダッシュ」をさせる機能不全家族 「周平、学校は?」 それに答えない息子の足の怪我を見て、傷を舐める母・三隅秋子(みすみ/以下、秋子)。 このオープニ…

息を呑む圧巻の心理的リアリズム 映画「瞳の奥の秘密」の凄み  フアン・ホセ・カンパネラ

1 「瞳は語りかける。瞳は雄弁だ」 【現在】 「1974年6月21日 モラレスとリリアナの最後の朝食。モラレスはこの朝を生涯忘れない。休暇の計画を立て、咳に効くレモンティーを飲んだ。角砂糖は、いつも通りひとつ半。以来、ベリージャムは食べてない…

天外者('20)   田中光敏

<「資産はなく、借金だけが残されていた」男の顕彰譚> 1 括り切った男が拓く〈未来〉だけが広がっている 「1850年 東の果てのこの島国では、長きにわたる鎖国が解け、新たな風が吹き出していた。そんな時代の転換期には、必ず英雄たちが現れる。私の…