2017-11-01から1ヶ月間の記事一覧

壊れゆく日々に、人は何ができるか

1 神経が悲鳴を上げている。 今日という一日が、私の人生の全てである。 昨日もそうだった。 明日については、もう、私の予約はない。 今日と明日の間には、およそ、一年間にも及ぶような時間の隔たりがある。 だから、どうでもいいのだ。 今日というこの日…

葛城事件(’16) 赤堀雅秋 <歪に膨張した「近親憎悪」の復元不能の炸裂点>

1 家族の漂動の中枢に、「ディスコミュニケーション」の発動点になっている男が居座っていた 「その夜の侍」に次いで、またしても、赤堀雅秋監督は凄い傑作を世に問うてくれた。 心が震えるような感動で打ちのめされ、言葉も出ない。 5人の俳優の完璧な演…

一生を懸けた「仕事」を持つ男たちの物語

1 「俺のプロジェクト」を持つ男が、それを失った男の心に架橋していく 「そう。4千枚。皆、同じ場所の写真だ。俺のプロジェクトだ。一生を懸けた俺の仕事だ」 映画の中の、このセリフが大好きだ。 映画の名は「スモーク」。 1995年公開のアメリカ・日…

淵に立つ(’16)深田晃司 <「視界不良の冥闇の広がり」と「絶対孤独」〉

1 「彼のような人こそ、神様から愛されなければならないのに」 「視界不良の冥闇(めいあん)の広がり」と「絶対孤独」いう、人間の〈存在性〉の懐深(ふところふか)くに潜り込んでいる風景が、「異物」の侵入によって、寸断された時間の際(きわ)に押し…

菅野智之は日本球界で最強の投手である ―― 「10完投200イニング」を目標にする男の真骨頂

2 自らのピッチングスタイルの完成形を目指す男 以下、私が菅野智之に強く惹かれる理由を書いていきたい。 その1。 その瞬間、投手が輝く奪三振の魅力に取り憑かれることなく、「打たせて取る」という、一見、地味なピッチングスタイルに拘(こだわ)って…