2011-10-01から1ヶ月間の記事一覧
1 訴求力を決定的に高めて成就した「内的清潔感」という推進力 本作を根柢において支えているもの ―― それは、ジュリー・アンドリュース演じる修道女マリアの人物造形が、眩いまでに放つ「清潔感」である。 「素直で、健全な若者育成映画」、「観ると心が洗…
1 「変化への恐れ」、「愛着感の喪失」、そして「親達の間の敵意」というリスクに搦め捕られた少女 極めて情緒的な映像に仕上がっている本作は、思春期前期にある12歳の少女が、両親の別居・離婚という「非日常」の状況下で、未だ幼い自我が蒙る複雑で様…
1 思春期状況に呼吸を繋ぐ少年少女たちを捕捉する、「非日常」の未知のゾーンの危うさ 本作の基幹テーマは、映像の冒頭のシークエンスのうちに凝縮されている。 某地方都市の木曜日の夜。 市立中学校のプールで密かに泳いでいた一人の少年が、たまたま、プ…
1 個人が「罪」とどう向き合っているかについての映画 「私たちはメディアによって操作されているのではないか?」 この問題意識がミヒャエル・ハネケ監督の根柢にあって、それを炙り出すために取った手法がビデオテープの利用であった。 覗き趣味に堕しか…
1 「オサマ」という名の「少年」が誕生したとき 「忘れられずとも許せはしよう」(N・マンデラ) これが、冒頭のキャプション。 「政治運動ではありません。私たちはひもじい」 ブルカに覆われた女性たちのデモでの、遠慮げなシュプレヒコール。 彼女たちの…
1 「ヒューマンドラマ」としての不全性を削り取った「戦争映画」のリアルな様態 テロの脅威に怯えながらも、その「非日常」の日常下に日々の呼吸を繋ぎ、なお本来の秩序が保証されない混沌のバグダッドの町の一角。 そこに、男たちがいる。 米陸軍の爆発物…
ここに収められている画像は、2000年のガードレールクラッシュ以降、カメラを手に持つことができなくなった私に替わって、些か時間の余裕ができた妻が「清瀬・我が町」の目眩(めくるめ)く素晴らしい風景を、デジタルカメラ(パナソニックLumix)で撮っ…
1 「純粋動機論」のロールモデルとしての「心優しきテロリスト」 この映画は本質的に、1960年代半ば以降、他の映画会社を圧倒し、数多の「ヤクザ映画」を占有した感のある、東映の「任侠路線映画」の延長線上にある作品と言っていい。 この映画に登場す…
この国の人々の心の風景の、あまり見えにくいテーマについて簡単に言及したい。 それは、この国の人々にあって稀薄だと思える「闘争心」のこと。具体的には、「日本人の闘争心の継続力の不足」についての言及である。 四方を海に隔たれていて、そこだけは何…
1 「橋の下」に住む二つの家族の交叉の中で 「もはや戦後ではない」 これは、1956年の経済企画庁編纂の「経済白書」の表題である、「日本経済の成長と近代化」の中で使われた有名な記述。 流行語にもなったこの言葉の背景には、高度経済成長の嚆矢(こ…
序 母子の変わらぬ情愛 成瀬作品には珍しく慈母観音が登場する映画だが、例によってその内実は甘くない。 「秋立ちぬ」の残酷さが人為的な環境によるものであるのに対して、この作品の残酷さは自らの力で軌道修復できない不幸に起因する。遣り切れないほどの…
ここに収められている画像は、2000年のガードレールクラッシュ以降、カメラを手に持つことができなくなった私に代って、些か時間の余裕ができた妻が「清瀬・我が町」の目眩(めくるめ)く素晴らしい風景を、デジタルカメラ(パナソニックLumix)で撮った…
1 「人の琴線を震わせる何か」を狙った「ヘビーなミュージカル」の毀誉褒貶 少年時代に、コミュニストであった両親が、「カス」だと嘲笑していたミュージカルが好きだった男がいる。 しかし、彼が観たミュージカルは、「涙にむせぶようなヘビーなもの」では…
ここには、「武蔵野」、「奥武蔵」、「秩父」など、私にとて最も愛着の深い「春爛漫」の風景の多くの写真が収められている。 中でも、「奥武蔵」と「秩父」への愛着の深さは格別であり、そのエリアへの撮影行なしに、私の趣味の継続は存在しなかった。 特に…
「緑のある風景」の中で、私にとって最も印象深いのは、距離の近さから、私が足繁く通った三宝寺池公園である。 新緑の頃の瑞々しいまでの美しさは、「光の春」への季節の変容を感受させるに充分過ぎるものだった。 三宝寺池公園の特化されたスポットの懐ろ…
1 「無償の愛」の底力の前で屈服する男の崩れ方に集約される物語の決定力 「八重はソーニャのように、男主人公にとっては無償の愛をかわしあう相手でなければならぬ。(略)とにかく、二人の主人公が出来上がると、その二人の性格や、こし方や、生きている…
以下の画像は、20年~30年以上前に各地を旅行した際に、主にコンパクトカメラで撮ったネガフィルムを、キャノンスキャナーによってスキャンして修正した画像です。 従って、光や酸化によって変色するネガの傷が、そのまま残っている写真も多くあります。…
夏の長期休暇をとって、湖畔の別荘へ向かうショーバー一家。 ヨットを牽いたワゴン車内には、夫のゲオルグ、妻のアナの夫妻と、一人息子のショルシと愛犬が同乗している。 奇妙な「事件」が起きたのは、セーリングの準備をしている父子の留守のときだった。 …
眼の前にキャベツ畑が広がる、西大泉の一角で学習塾を開く傍ら、そこで空いた時間を目一杯利用しての、私の低山徘徊・撮影行脚は約20年間続いた。 今、思い起こしてみると、私の行動エリアは写真撮影限定の、都心や郊外の花名所巡りと、奥武蔵・秩父への低…